「No Joy」タグアーカイブ

No Joy “Ghost Blonde” / ノー・ジョイ『ゴースト・ブロンド』


No Joy “Ghost Blonde”

ノー・ジョイ 『ゴースト・ブロンド』
発売: 2010年11月16日
レーベル: Mexican Summer (メキシカン・サマー)

 カナダのモントリオール出身のシューゲイザー・バンド、ノー・ジョイの1stアルバムです。

 囁くような耽美なボーカルと、歌メロもバンドのサウンドに埋もれ、一体となったバランスは、まさにシューゲイザーと言えます。

 ディストーション・ギターやフィードバック・ノイズが活躍するアルバムであるのは確かですが、ギターの音作りには各弦の響きまで確認できるものも多く、バンドのアンサンブルも丁寧に作り上げられている作品です。

 1曲目の「Mediumship」では、イントロから歪んだギターの音と、フィードバックが鳴り響き、その奥から流れるような歌メロが聴こえてきます。ノイジーなギターと、美しいメロディー。アルバム冒頭から、シューゲイザーらしい1曲です。

 2曲目の「Heedless」も、ギターのフィードバックが鳴り響くイントロから始まり、その後は複数のギターが空間を埋め尽くす1曲。コードを弾くリズム・ギターは、歪んではいますが、そこまで深くエフェクターはかかっておらず、何を弾いているのか聞き取りやすい音色です。

 4曲目「You Girls Smoke Cigarettes?」は、リズム隊が力強く、疾走感のある1曲。ギターよりも、硬い音質のベースが前面に出てくるアレンジです。

 5曲目「Pacific Pride」は、アンビエントな雰囲気のイントロから、緩やかにグルーヴする軽快な曲が展開されます。イントロで聴こえた持続音は、その後も鳴り続け、ヴェールのように楽曲を包み込みます。

 6曲目は「Hawaii」。タイトルからの先入観を抜きにしても、ザ・ベンチャーズのようなサーフ・ミュージックを彷彿とさせるイントロから始まります。楽曲もサーフ・ミュージック特有のノリの良さがあります。しかし、高音のノイジーなギターが鳴り響き、全体のサウンドはシューゲイザー的なもの。

 9曲目「Untitled」。歌なし、1分ちょっとのインタールード的な曲ですが、空間系エフェクトのかかったギターが、自由にはずむような開放感のある1曲で、アルバムのなかで良いアクセントになっています。

 囁き系のボーカルと、歌もバンドの一部に溶け込んだサウンド・プロダクションは、シューゲイザーらしいと言えます。しかし、曲によってはエフェクター控えめで原音を認識できる音作りのギターも多く、バンドの躍動感も大切にしている作品だと思います。

 サーフ・ミュージックやガレージ、エレクトロニカを感じさせる要素も散りばめられ、カラフルな印象を持ったアルバムです。

 





No Joy “More Faithful” / ノー・ジョイ『モア・フェイスフル』


No Joy “More Faithful”

ノー・ジョイ 『モア・フェイスフル』
発売: 2015年6月8日
レーベル: Mexican Summer (メキシカン・サマー)
プロデュース: Jorge Elbrecht (ホルヘ・エルブレヒト)

 カナダのモントリオール出身のシューゲイザー・バンド、ノー・ジョイの3rdアルバムです。

 浮遊感のある耽美なボーカルは、マイブラを彷彿とさせます。ですが、圧倒的な轟音ギターで押し流すわけではなく、ドラムのビートもはっきりしていて、バンド全体のアンサンブルもしっかりしたアルバムに仕上がっています。

 ギター・サウンドも量感で圧倒するような轟音の一辺倒ではなく、曲によって適材適所で音作りがなされており、通しで聴くと多彩な印象が残る作品だと思います。

 1曲目の「Remember Nothing」は、冒頭の1曲らしく、前のめりになった疾走感が溢れる曲です。リズム隊がしっかりと土台を支え、その上にノイジーなギターと流れるような歌メロが乗る構造。硬い音質のベースも大活躍。

 2曲目「Everything New」は、各楽器が絡み合うように立体的なアンサンブルを形成します。ギターはエフェクト控えめで、各楽器を分離して聞き取りやすい1曲。

 5曲目「Burial In Twos」は、トレモロのかかったギター(もしかしたらキーボードかも)が印象的。それ以外にも複数の異なるサウンドのギターが重なっていき、多層的なアンサンブルを形成していく1曲。

 6曲目「Corpo Daemon」は、ガレージ風のギターが唸りをあげ、バンド全体も疾走していくロックな1曲。ボーカルにもエフェクトがかけられ、シューゲイザーとガレージが融合した曲、といった感じです。

 10曲目「I Am An Eye Machine」は、空間系エフェクターをかけられ、揺れるギター・サウンドが空間に浸透していくような1曲。轟音で押し流すのではなく、ゆっくりと音が空間を埋めていくような1曲です。

 歌メロよりも、楽器の音が前景化されるという意味では、シューゲイザー的な作品。言い換えれば、歌メロも楽器の一種かのように、バンドのアンサンブルに溶け込んでいます。

 前述したとおり、曲によってエフェクターを使い分け多種多様なギター・サウンドを響かせています。さらに、そのサウンドを用いて、音響が前面に出たアプローチだけでなく、バンドらしいアンサンブルも構成されるアルバムだと言えます。

 シューゲイザーが好きな方にも、もう少し音像のくっきりしたインディー・ロックが好きな方にも受け入れられやすい、間口の広い作品であると思います。

 





No Joy “Wait To Pleasure”/ ノー・ジョイ『ウェイト・トゥ・プレジャー』


No Joy “Wait To Pleasure”

ノー・ジョイ 『ウェイト・トゥ・プレジャー』
発売: 2013年4月23日
レーベル: Mexican Summer (メキシカン・サマー)
プロデュース: Jorge Elbrecht (ホルヘ・エルブレヒト)

 カナダのモントリオール出身のシューゲイザー・バンド、ノー・ジョイの2ndアルバムです。

 深くエフェクトのかかったギターを中心にしたアンサンブルに、耽美なボーカルが溶け合う、これぞシューゲイザー!というサウンドの1作。しかし、音響が前景化した作品かというとそうでもなくて、アンサンブルにも聴き応えのある作品です。

 1曲目「E」は、ギターのフィードバックが響きわたるイントロから、低音の効いた立体的なドラムと、分厚いサウンドのギターが層になって加わり、音の壁を作り上げます。音で満たされた空間を、ボーカルが自由に羽ばたくようにメロディーを紡いでいきます。

 全体にファズのかかったような塊感のあるサウンドなのですが、再生時間1:53あたりから開放的かつ立体的なサウンド・プロダクションへ。このようなコントラストを効果的に用いるのも、このバンドの特徴です。

 3曲目の「Prodigy」は、ドラムのリズムと音色がくっきりとしていて、ノリの良い疾走感のある1曲。

 8曲目「Wrack Attack」は、緩やかなグルーヴ感と浮遊感が共存する1曲。タイトでシンプルなリズム隊と、エフェクターを控えめに各弦の音まで認識しやすいギターのコード・ストローク、ドリーミーなボーカルが溶け合います。

 9曲目「Ignored Pets」は、イントロから複数のギターが重なってきますが、それぞれ音色が違っていて、多層的に響きます。ドラムのリズムもはっきりしていて、疾走感のある1曲。

 前述したとおり、いわゆるシューゲイザー的なサウンド・プロダクションを持った1枚です。空間を埋め尽くすような分厚いギター・サウンドが随所に聴かれますが、それだけには留まらない多彩なサウンドも響かせています。

 複数のギターが重ねられていますが、それぞれのギターの音作りが違うものが多く、丁寧にギター・オリエンテッドな音楽を組み上げていることがうかがえます。

 曲によっては、音響よりもアンサンブル重視と思われるもの、リズム重視でドラムが前景化される楽曲もあり、一本調子な印象にはならず、バラエティ豊かな1枚になっていると思います。

 1st『Ghost Blonde』と、3rd『More Faithful』は配信されているのに、なぜだか現時点では、この2ndアルバムのデジタル配信はおこなわれていないようです(>_<)