Chicago Underground Duo “Axis And Alignment (Axis & Alignment)”
シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ 『アクシス・アンド・アラインメント』
発売: 2002年3月19日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)
コルネットのロブ・マズレク(Rob Mazurek)と、ドラムとパーカッションのチャド・テイラー(Chad Taylor)によるジャズ・デュオ、シカゴ・アンダーグラウンド・デュオの3rdアルバム。
レコーディング・エンジニアとミックスは、バンディー・K・ブラウンとジョン・マッケンタイアが、楽曲によって分け合うかたちで担当。
ジャズ的なフレーズや即興性を、ポストロック的な手法で再構築。シカゴ・アンダーグラウンド・デュオの音楽性を一言であらわすなら、そう言って差し支えないでしょう。3作目となる本作でも、ジャズのパーツを用いて、全く新しい音楽を作り上げようという意思が感じられます。
1曲目「Micro Exit」は、ヴィブラフォンの細かい音の粒が、サイケデリックかつ幻想的な空気を作りだす1曲。
2曲目「Lifelines」は、コルネットのフレーズとドラムのリズムからは、ジャズの香りが立ちますが、全体のアンサンブルにはスウィングや躍動感が希薄で、バラバラに解体された後に組み立て直したような耳ざわりの1曲です。
3曲目「Particle And Transfiguration」は、ドラムもコルネットも、高速で音符の詰め込まれたフレーズを繰り出す、フリージャズ色の濃い1曲。徐々に、全体にエフェクト処理が加えられ、攻撃的でアヴァンギャルドなサウンドへと変化していきます。
4曲目「Exponent Red」は、ポリリズミックなドラムと、コルネットのリリカルなフレーズはジャズそのもの。しかし、シンセの太い音色がモダンな空気を演出し、全体のジャズ色を薄め、テクノのようなサウンドに仕上げています。
5曲目「Average Assumptions And Misunderstandings」は、ピアノとヴィブラフォンが不協和に重なり合う、アヴァンギャルドな1曲。ジャズというより、現代音楽に近い雰囲気。
7曲目「Two Concepts For The Storage Of Light」は、叩きつけるようにパワフルかつ自由なリズムを刻むドラムと、歌い上げるようにフレーズを紡ぐコルネットが絡み合う、フリージャズ色の濃い前半から、シンセが加わりモダンな空気を増した後半へと展開。全体としても、躍動感に溢れ、単純にかっこいい曲です。
8曲目「Memoirs Of A Space Traveller」は、フリーな高速フレーズを繰り出すコルネットとドラムを、ノイズ的な電子音が包み込む、アヴァンギャルドな1曲。
10曲目「Access And Enlightenment」は、トライバルなドラムと、軽快なシンセとコルネットが絡み合う、立体的で躍動感に溢れた1曲。ジャズ的なフレーズと即興性を持ったコルネット、変幻自在にカラフルなリズムを刻むドラム、オルタナティヴな空気を持ち込むシンセの音色が溶け合い、フックの多い音楽を作りあげています。
アルバムによって、アプローチの方法とバランスを変化させながら、常にジャズを用いた新しい音楽を目指しているシカゴ・アンダーグラウンド・デュオ。
本作でもジャズのスウィング感や即興性を、ポストロック的な感覚で解体・再構築し、ジャンルを超えた音楽を完成させています。