Lightning Bolt “Earthly Delights”
ライトニング・ボルト 『アースリー・ディライツ』
発売: 2009年10月14日
レーベル: Load (ロード)
プロデュース: Dave Auchenbach (デイヴ・オーチェンバック)
ロードアイランド州プロヴィデンス出身の2ピース・バンド、ライトニング・ボルトの5thアルバム。メンバーは、ドラムのブライアン・チッペンデール(Brian Chippendale)と、ベースのブライアン・ギブソン(Brian Gibson)の2人。
ドラムとベースのみという特異な編成のこのバンド。編成からは音楽性が想像できませんが、テクニックに優れた2人のメンバーによって、テンション高く、アグレッシヴでアヴァンギャルドな演奏が繰り広げられる1作です。
これまでの彼らの作品も、上記の説明からはみ出すことはないのですが、金太郎飴的にいつも同じことをやっているかというと、そうではありません。デビュー以来、高いテンションを保ちつつも、表現力の幅は広がり、洗練されてきた、と言って良いでしょう。
本作も、めちゃくちゃに演奏しているかのようなアグレッシヴな演奏を基本としながら、メリハリのついた、表情を様々に変える音楽が詰まっています。
1曲目の「Sound Guardians」は、叩きつけるようなドラムと、激しく歪んだ硬質なベースが、絡み合いながら疾走していく1曲。暴走のように思えて、タイトにぴったり合わせるところと、ラフに暴れるところが共存し、疾走感に溢れた演奏が繰り広げられます。
2曲目「Nation Of Boar」は、イントロから耳にうるさく音が飛び交う1曲。こちらも1曲目に似て、暴発とも呼べる、激しく音が噴出する曲ですが、手数の多いドラムのリズムは正確で、アグレッシヴさとタイトさが両立されています。
3曲目「Colossus」は、テンポも歪みも抑えめに、一定のリズムを守るランニングのように、小気味よく進行していく1曲。
4曲目「The Sublime Freak」は、原音がわからないほど歪んだベースと、手数が多く前のめりにリズムを刻むドラムが疾走する、アヴァンギャルドな1曲。演奏的にはかなりテクニカルで、ポップとも言い難い曲ではありますが、あか抜けたボーカルも相まって、カラフルで明るい雰囲気を持っています。
8曲目「S.O.S.」は、嵐のように轟音とドラムのリズムが降り注ぐ1曲。不自然なほど前のめりになり、疾走していきます。
9曲目「Transmissionary」は、12分を超える大曲。イントロからドラムは立体的で、躍動感あふれるプレイを聴かせます。その後、ベースが重なり、アグレッシヴな演奏が展開。
はっきりとしたメロディーや構造を持つわけではなく、あまり言葉で語ってどうこうという音楽ではありませんが、変態的と言っていいほどに、テクニカルでアグレッシヴな演奏が展開されるアルバムです。
前述したように、いわゆるポップスが持つような構造はほとんど持ちませんが、きっちりとリズムを合わせる部分と、ラフに暴走する部分を使い分け、コントラストが鮮やかな、ダイナミズムの大きい音楽を作り上げています。
テンション全開で突っ走ることが多かった初期に比べると、もはや伝統芸能のように、攻撃性を保ったまま、表情豊か(でも一聴すると「怒り」が多め)な音楽を展開していると思います。やっぱり、ただめちゃくちゃにやってるわけではなく、優れたテクニックとアイデアを持った2人ですね。