Lightning Bolt “Oblivion Hunter”
ライトニング・ボルト 『オブリヴィオン・ハンター』
発売: 2012年9月25日
レーベル: Load (ロード)
ロードアイランド州プロヴィデンス出身の2ピース・バンド、ライトニング・ボルトの2012年リリースのEP作品。
2009年の5thアルバム『Earthly Delights』と、2015年の6thアルバム『Fantasy Empire』のちょうど間ぐらいにリリースされた1作です。EP扱いになっていますが、7曲収録で時間は約38分と、アルバムに近いボリュームを持った作品となっています。
これまでの5作のアルバムと同じく、彼らの地元プロヴィデンスのレーベル、ロードからの発売。しかし、2015年リリースのアルバム『Fantasy Empire』からは、シカゴの名門インディペンデント・レーベル、スリル・ジョッキーに移籍。なおかつ、5thアルバムと6thアルバムの間は、約5年半も空いているので、両者の音楽性の変遷を確認する上で、重要な作品と言えます。
メンバーは、ドラムとベースの2名。その特異な編成から繰り出される、凄まじいテンションのアンサンブルが、ライトニング・ボルトの特徴ですが、初のEP作品となる本作でも、彼らの特徴は存分に閉じ込められています。
すなわち、手数が多く叩きつけるようなドラムと、ギターのような音域までカバーする動きまくるベース。とてもギターレスの2ピース・バンドとは思えぬ、音数が煩雑なまでに多いアンサンブルが展開されます。
なぜ、アルバムではなく、EP扱いになったのか、その経緯は分かりませんが、多彩な曲が収録され、カラフルなアルバム作品と比較すると、単色で共通の疾走感に貫かれたのが本作、という印象を受けます。
1曲目の「King Kandy」から、潰れたような音質のドラムとベースが押し寄せ、テンション高いボーカルが全体を煽る、彼ら得意の演奏が展開。
2曲目の「Baron Wasteland」では、さらにシフトを上げ、脳みそを揺らすような、怒涛のアンサンブルが繰り広げられます。
ややメロディアスな3曲目「Oblivion Balloon」、音が四方八方から飛び交うジャンクな4曲目「Fly Fucker Fly」と続き、5曲目の「The Soft Spoken Spectre」が、アルバムの中で毛色の違う1曲。
1分ちょっとの短い曲ですが、アコースティック・ギターのような音色が用いられ、ベンチャーズ(The Ventures)を思わせる、サーフ・ミュージックのような雰囲気を持っています。
6曲目「Salamander」と、7曲目「World Wobbly Wide」では、前半の楽曲群にも増して、疾走感とカオティックな演奏が繰り広げられます。
前述のとおり、7曲収録のEP作品ですが、5曲目の「The Soft Spoken Spectre」を除くと、同じぐらいのテンションで突っ走る1作です。アルバムよりも、演奏のコンセプトを一点に絞り、凝縮されているため、こちらも勢いのままに聴くことができます。
ただ、個人的には箸休めのような、5曲目「The Soft Spoken Spectre」が一番好き。僕がベンチャーズ好きだということもありますが、ライトニング・ボルトの遊び心が感じられる、かわいい1曲です。