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Les Savy Fav “Let’s Stay Friends” / レ・サヴィ・ファヴ『レッツ・ステイ・フレンズ』


Les Savy Fav “Let’s Stay Friends”

レ・サヴィ・ファヴ 『レッツ・ステイ・フレンズ』
発売: 2007年9月18日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)

 ロードアイランド州プロヴィデンス出身のバンド、レ・サヴィ・ファヴの4枚目のアルバム。ベースのシド・バトラーは、本作をリリースしているレーベル、フレンチキスの創設者です。

 立体的なアンサンブル、オルタナティヴな香りを振りまくディストーション・ギター、実験的なアレンジ等々、インディーロックの魅力が多分につまった、USインディーの良心のようなアルバムです。

 ルーツ・ミュージックからガレージ、オルタナ、インディーロックまで、多種多様なジャンルが顔を見せ、実験的な要素もありながら、全体としてはカラフルでポップ。バランス感覚が抜群だと思います。

 1曲目の「Pots & Pans」から、臨場感あふれるドラム、オーバー・プロダクションになっていない地に足のついた音色のギター、それらを用いた多層的なアンサンブルが展開。早速、素晴らしい1曲です。再生時間1:02あたりからの立体的なドラミングも最高。

 2曲目の「The Equestrian」は、ギター、ベース、ドラム、そしてボーカルまで、全ての楽器がエモーションの表出のようなサウンドを響かせる1曲。「エモい」という言葉では片付けられないほどエモーションが充満しています。

 4曲目の「Patty Lee」は、タイトなリズム隊と、高音を使ったギターのコントラストが鮮やかな1曲。コーラスワークと歌メロも色彩豊かでポップ。

 8曲目「Slugs In The Shrubs」は、縦ノリのリズムがかっこいい1曲。イントロのトライバルな雰囲気のかけ声、エモーショナルなボーカルも、カラフルかつ雑多な空気感を演出しています。

 一聴するとわかりやすいロックな曲のように思えても、ちょっと奇妙な部分を持っている、実にインディーロックらしいアルバムです。

 アンサンブルも良いし、立体的で臨場感あふれるサウンド・プロダクションも良いです。日本ではいまいち地味な印象のバンドですが、積極的にオススメしたいバンドであり、作品。

 





Local Natives “Gorilla Manor”/ ローカル・ネイティヴス『ゴリラ・マナー』


Local Natives “Gorilla Manor”

ローカル・ネイティヴス 『ゴリラ・マナー』
発売: 2009年11月2日(イギリス), 2010年2月16日(アメリカ)
レーベル: Infectious (インフェクシャス), Frenchkiss (フレンチキス)

 カリフォルニア州ロサンゼルス出身のバンド、ローカル・ネイティヴスの1stアルバムです。アメリカのバンドですが、先にイギリスで2009年11月にインフェクシャス・レコード(Infectious Records)より発売、アメリカ国内では2010年2月にニューヨークのレーベル、フレンチキスから発売されています。

 立体的なアンサンブルとサウンド・プロダクション。いきいきとした躍動感と、流れるようなメロディー。意外性のあるアレンジ。実にインディー・ロックらしい、インディー・ロックでしか聴けない魅力が凝縮されたアルバムであると思います。

 3人のギタリストを有する5人編成で組み上げるアンサンブルは、各楽器の役割がはっきりしていて機能的で緻密。しかし、同時に生命力あふれるグルーヴ感も持ち合わせた演奏を、展開していきます。

 1曲目「Wide Eyes」のイントロは、透明感のあるサウンドのギターに続いて、立体感あるドラミングが、早速楽曲に奥行きをプラスしています。タペストリーを織り上げるようなギター、タイトに立体的なリズムを刻むドラム、メロディアスなフレーズでバンドを下支えするベース、さらに美しいコーラス・ワークと、アルバムの幕開けにふさわしい情報量の多い1曲。

 再生時間1:57あたりからのドラムと、音響を前景化したようアレンジも良いです。2:47あたりからのベースなど、全ての楽器に見せ場があります。

 2曲目の「Airplanes」は、ピアノと、メンバーによる動物のような叫び声から、いったい何が始まるのか?という空気でスタートします。しかし、サウンドもアンサンブルも立体的で非常にかっこいい曲。コントラストを演出し、楽曲をコントロールするようなドラムが秀逸。

 3曲目「Sun Hands」は、ドラムのリズムにギターが乗っかり、バンド全体が加速していく1曲。この曲も立体的かつ、各楽器が絡み合う躍動感あふれるアンサンブルが気持ちいいです。

 6曲目「Camera Talk」。ドタバタしたドラムが響き渡り、ざらついた質感のギターがコードを弾くイントロからは、ほのかにガレージの香りが漂います。しかし、全体としては、バイオリンも使用され、色彩豊かなサウンド・プロダクション。

 11曲目「Stranger Things」にもバイオリンが導入され、コーラス・ワークも重厚な、壮大なアレンジ。しかし、オーケストラのような響きではなく、ソリッドな響きのドラムをはじめ、オーガニックな楽器の響きが前面に出た、大地が躍動するようなサウンド。

 個人的に、このバンドはドラムが好きです。しかし、もちろんドラムだけではなく、バンド全体でとても躍動感のあるアンサンブルを作り上げています。

 スケールの大きさを感じる壮大なアレンジの曲も多いのですが、前述したようにオーケストラのような荘厳さではなく、自然のあたたかみを感じるオーガニックなサウンドを響かせるアルバムです。僕はかなりお気に入りのバンド。

 





The Dodos “No Color” / ザ・ドードース『ノー・カラー』


The Dodos “No Color”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『ノー・カラー』
発売: 2011年3月15日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: John Askew (ジョン・アスキュー)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの4thアルバムです。本作には、一部の曲でバッキング・ボーカルとして、ニーコ・ケース(Neko Case)が参加しています。

 アコースティック・ギターとドラムを基本とした2ピース・バンドであるのに、人数の少なさ、音色の少なさを全く感じさせない、パワフルかつカラフルで、変幻自在なアンサンブルを響かせるザ・ドードーズ。

 ナチュラルな響きのアコースティック楽器を中心に据え、フォークやカントリーを思わせる耳ざわりでありながら、ロック的なダイナミズムを持っているのも、彼らの特徴です。

 本作『No Color』でも、使用されるサウンドの種類には限りがあるのに、曲ごとに多彩なアンサンブルを構成し、ロック的な迫力あるグルーヴを聴かせてくれます。アルバムを通して、サウンド的にもアレンジ的にも、単調な印象は全くありません。

 1曲目の「Black Night」のイントロから、早速ドタバタと打ち付けるようなドラムのビートが響き、透明感のある繊細なアコースティック・ギターのサウンドが、それに加わります。サウンドとリズムの両面で、両者が溶け合う絶妙なバランス。さらに、流れるようなボーカルのメロディーが、曲に彩りをプラスします。

 ドラムが入っていなかったら、牧歌的な弾き語りの曲になっていそうですが、パワフルでジャンクな雰囲気も醸し出すドラムが、曲に奥行きを与えています。おそらくオーバー・ダビングで、エレキ・ギターらしき音も重ねられているものの、2ピースとは思えない躍動感あふれる1曲。

 2曲目「Going Under」も、臨場感あふれるドラムと、アコースティック・ギターのみずみずしい音色が絡み合う1曲。この曲では、オルタナティヴな雰囲気を持ったエレキ・ギターが効果的に使われています。

 4曲目「Sleep」は、カントリーの香り立つアコギの速弾きと、前のめりに暴発しそうなドラムが疾走していく1曲。使用されている楽器とサウンド・プロダクションはカントリーに近いのに、楽曲の疾走感、躍動感は、ロックが持つそれです。

 6曲目「When Will You Go」は、アコースティック・ギターの繊細な音と、タイトなドラムがグルーヴを生み出していく1曲。

 1stアルバムで、アコースティック・ギターとドラムの2ピースとは思えない迫力のサウンドを響かせ(しかも自主リリース!)、2nd、3rdとサウンドとアレンジの幅を広げてきたドードーズ。今作は、1stアルバム時代の生楽器によるパワフルな躍動感が、戻ってきたアルバムだと思います。

 2ndと3rdでは、楽器とサウンドの種類を増やし、アレンジメントも着実に洗練されていきました。そんな過去2作がおとなしいアルバムというわけではなく、今作はオーガニックな生楽器のサウンドへと原点回帰し、アンサンブルを再構築しようというアルバムのように感じました。

 僕はドードーズが大好きだというのもありますが、彼らの作品にハズレなしです!

 





The Dodos “Time To Die” / ザ・ドードース『タイム・トゥ・ダイ』


The Dodos “Time To Die”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『タイム・トゥ・ダイ』
発売: 2009年9月15日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: Phil Ek (フィル・エク)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの3rdアルバムです。前作『Visiter』に引き続き、ニューヨークのインディペンデント・レーベルFrenchkissからのリリース。

 ドードーズは、アコースティック・ギターとドラムを中心にしたオーガニックなサウンドを持ちながら、音色の少なさを感じさせないカラフルな世界観と、ロック的なダイナミズムを持ったアンサンブルを構成するところが魅力。

 3作目となる今作でも、エレキ・ギターやキーボードなど電気楽器の使用頻度が高まっているものの、独特の立体感のあるドラムとグルーヴ感は健在。

 1曲目「Small Deaths」は、イントロはギターポップのような爽やかなギターとボーカルが印象的。ですが、再生時間0:46あたりでドラムが入ってくると、途端にパワフルでいきいきとした躍動感が生まれます。

 3曲目の「Fables」は、はずむようなリズムとサウンドのアコースティック・ギターと、前のめりにアジテートするように叩きつける迫力あるドラムが、絶妙に絡みあう1曲。ドラムのサウンドが立体的なところもかっこいい。歌のメロディーとハーモニーも美しい。非の打ちどころの無い曲です。

 4曲目「The Strums」は、低音が響き渡るドラムと、重層的なクリーントーンのギターが溶け合う、こちらも美しい1曲。空間系のエフェクターを使用しているのか、ギターの音には揺らぎがあり、サイケデリックな雰囲気も漂います。

 6曲目「Two Medicines」は、タイトルを呪術的に繰り返す、わずかにサイケデリックな香りを放つイントロから、アコギとドラムが絡むこのバンド得意の展開へ。奥の方で鳴るヴィブラフォンの響きも、楽曲を彩っています。

 使用する楽器の種類が増え、サウンド・プロダクションは多彩になっています。しかし、彼らのフィジカルな躍動感は失われず、轟音ギターが唸りをあげる作品ではないのに、ダイナミズムの大きい1作になっています。

 ドラムをはじめ、立体的な音像も素晴らしく、オススメの1枚です。個人的にドードーズが大好きなので、もっと多くの人に聴いてもらいたいと、心から思います。

 





The Dodos “Visiter” / ザ・ドードース『ヴィジター』


The Dodos “Visiter”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『ヴィジター』
発売: 2008年3月18日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: John Askew (ジョン・アスキュー)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの2ndアルバム。前作『Beware Of The Maniacs』は、レーベルを通さない自主リリースでしたが、今作からLes Savy Favのベーシスト、シド・バトラーが設立したニューヨークのレーベル、Frenchkissと契約しています。

 1stアルバムである前作は、アコースティック・ギターとドラムを中心にしたナチュラルなサウンドを用いて、パワフルに躍動感あふれるアンサンブルを響かせた1作でした。今作では、アンサンブルがより洗練され、アコースティックギターが重層的に、ドラムが立体的に音楽を構成する1枚になっています。前作に引き続き、ボーカルの美しいメロディーとハーモニーも、もちろん聴きどころ。

 1曲目の「Walking」は、ゆったりとしたリズムのなか、アコースティックギターとバンジョーが絡み合い、牧歌的な雰囲気を醸し出します。およそ2分の短い曲で、彼ら得意の立体的なサンサンブルも控えめな、イントロダクション的な役割の1曲。

 2曲目の「Red And Purple」では、アコギのコード・ストロークを、低音の響く立体的なドラムが追いかける、彼ら得意のアンサンブルが展開されます。広々とした空気感まで感じられるアコギの響きと、様々な方向から聞こえてくる立体的なドラムが、開放感ある音空間を作り上げています。

 3曲目「Eyelids」は、ギターとドラムが掛け合うイントロから、ボーカルのハーモニーが全体を包み込む、重層的なサウンドが美しい1曲。ドタバタしたドラムのサウンドには、ローファイの香りも漂います。

 4曲目の「Fools」は、リムショットが耳に残り、イントロから疾走感のある1曲。立体的なアンサンブルが彼らの魅力だと思いますが、各楽器が縦を合わせた演奏から、徐々に各楽器が離れていく、この曲のような展開も良い。

 8曲目「Paint The Rust」は、哀愁を帯びたイントロのギターのフレーズが聴こえます。叩きつけるようなドラムが入ってくると、立体的な音像に一変。再生時間1:44あたりからの間奏も、カントリーとインディーロックの融合といった感じで、ルーツと現代性が溶け合った1曲。

 前作同様、アコースティックギターが中心でありながら、サウンド・プロダクションとアレンジはさらに洗練され、カラフルな印象のアルバムに仕上がっています。オーガニックな質感のアコースティック・ギターと、どこかローファイな雰囲気を持つドタバタした音色のドラムのバランスも、前作に引き続き素晴らしいです。