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The Dodos “Individ” / ザ・ドードース『インディヴィッド』


The Dodos “Individ”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『インディヴィッド』
発売: 2015年1月25日
レーベル: Polyvinyl (ポリヴァイナル)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの6thアルバム。前作に引き続き、イリノイ州シャンペーンのレーベルPolyvinylよりリリース。

 1stアルバム『Beware Of The Maniacs』では、アコースティック・ギターとドラムを中心にしたフォーキーなサウンドで、ロック的な躍動感とダイナミズムを実現させたドードーズ。その後、作品を重ねるごとに、音楽性とサウンド・プロダクションの幅を広げていきました。

 前述したように初期の作品ではオーガニックな耳ざわりの生楽器を、アンサンブルの中心に据えていた彼らですが、徐々にエレキ・ギターなどの使用も増え、前作『Carrier』も、様々なサウンドを効果的に融合し、アンサンブルを作り上げていました。

 今作『Individ』も、ルーツ・ミュージックの香りも漂いつつ、オルタナティヴで現代的なサウンドを持った作品に仕上がっています。

 1曲目「Precipitation」では、イントロからエレキ・ギターの音なのか、アンビエントなサウンドが鳴り響きます。そのまま、エレクトロニカのような音像を持ったサウンドが50秒ほど続きますが、躍動感あふれるドラムが加わり、流れるような美しいメロディーを歌うボーカルが入ってくると、音楽が途端に表情豊かになります。

 歌が中心にあるポップな曲ではあるのですが、まわりでは多種多様な音が鳴っており、しかもノイズに近いジャンクなサウンドも含まれているのですが、全ての音がタペストリーのように折り重なり、不思議と心地よい音楽になっています。(もし聴いてみて「うるさい」「気持ち悪い」と感じる方がいらっしゃったら、すいません…)

 3曲目「Bubble」は、空間系のエフェクターのかかったギターと、ラフに打ちつけるようなサウンドのドラムが、お互いにかみ合うようにリズムを形成する1色。こちらも、サウンドといいリズムといい、サイケデリックな空気が漂いますが、ボーカルのメロディーをはじめ、全体としてはポップな印象。

 4曲目「Competition」は、イントロから、もつれるようなドラムのリズムが、耳に引っかかります。ギターのサウンドにもローファイ感がありますが、聴いているうちに最初は違和感だったものが、音楽のフックへと転化していくのがわかる1曲。

 9曲目「Pattern / Shadow」は、7分を超える大曲。イントロから、毛羽立ったように歪んだサウンドをはじめ、複数の音色の異なるギターが交じり合い、複雑なアンサンブルを構成します。単純に静寂と轟音、ヴァースとコーラスを循環するのではなく、次々に展開のある曲です。再生時間3:25あたりから雰囲気が一変するので、これより前が「Pattern」、これ以降が「Shadow」ということなのでしょう。

 前述したように、初期ドードーズの特徴のひとつは、アコースティック楽器を用いながら、圧倒的な躍動感を響かせていたところですが、今作ではサウンドの実験性が格段に増しています。しかし、彼らの美しいメロディーとコーラス・ワーク、グルーヴ感あふれるアンサンブルも健在。

 また、実験的で違和感を覚えるようなサウンドやアレンジを使いながらも、それらを音楽的なフックに転化し、ポップ・ミュージックに仕立てるセンスにも、舌を巻きます。

 個人的には1stアルバム時の、カントリー色の強いサウンドなのに演奏はパワフル、というのも好きですが、今作も非常に好きなアルバムです。

 





The Dodos “Carrier” / ザ・ドードース『キャリアー』


The Dodos “Carrier”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『キャリアー』
発売: 2013年8月27日
レーベル: Polyvinyl (ポリヴァイナル)
プロデュース: Jay Pellicci (ジェイ・ペリッチ)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの通算5枚目のスタジオ・アルバム。2ndアルバム『Visiter』から4thアルバム『No Color』まではニューヨークのレーベルFrenchkissからのリリースでしたが、本作からイリノイ州シャンペーンと、カリフォルニア州サンフランシスコに居を構えるPolyvinylへ移籍しています。

 また、本作ではバンド名の表記から「The」が外され、「Dodos」と表記されています。このあとの6作目『Individ』では、「The Dodos」標記へ戻っています。

 ドードーズの特徴といえば、アコースティック楽器をアンサンブルの中心に据えながら、色彩豊かなサウンドと、パワフルでいきいきとした躍動感を響かせるところです。立体的で、空間の広さを感じさせる、ドラムのサウンドも魅力。

 今作『Carrier』は、パワフルで立体的なドラムはやや抑え目に、アンサンブルでコントラストとグルーヴを丁寧に組み上げた印象の1作。また、今まではアコースティック・ギターがサウンドの中核でしたが、今作ではエレキ・ギターが多用されているのも特徴です。

 1曲目は「Transformer」は、リズムの異なる2本のギターによるイントロから、徐々に音楽が躍動していきます。再生時間0:49あたり、再生時間1:40あたりなど、ドラムがシフトの切り替えを担い、バンド全体もドラムと共にコントラストを演出するアレンジも秀逸。

 4曲目の「Stranger」は、4分間の曲なのに、展開が実に多彩な1曲。細かくリズムを刻むドラムとギターが、音数の多さで壁を作るようなイントロ。再生時間1:49あたりからの、立ちはだかる壁のような厚みのあるディストーション・サウンド。さらに再生時間2:18あたりから、手数を増やし、一気にシフトを上げるドラム。そのドラムが先導者となって、バンド全体が躍動を始める展開も、鳥肌ものです。

 10曲目の「Death」は、タイトルのとおり、寂しけでエレクトロニカのような音響的なイントロ。空間系のエフェクターの深くかかった、幻想的なサウンドのギターと、穏やかに漂うようなボーカルが、アンビエントな雰囲気を醸し出します。ドードーズには、めずらしい音像を持った1曲。

 いきいきとした躍動感と、アンサンブルの巧みさは残しつつ、サウンド・プロダクションの広がりを感じさせる1作。このアルバムも、非常にクオリティが高いのは間違いないのですが、僕個人の好みだと、1枚目から4枚目の、カントリー色の強いサウンドながら、パワフルな躍動感を響かせていた作品の方が好きです。

 このアルバムは2018年3月現在、残念ながらデジタル配信はされていないようです。





The Dodos “No Color” / ザ・ドードース『ノー・カラー』


The Dodos “No Color”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『ノー・カラー』
発売: 2011年3月15日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: John Askew (ジョン・アスキュー)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの4thアルバムです。本作には、一部の曲でバッキング・ボーカルとして、ニーコ・ケース(Neko Case)が参加しています。

 アコースティック・ギターとドラムを基本とした2ピース・バンドであるのに、人数の少なさ、音色の少なさを全く感じさせない、パワフルかつカラフルで、変幻自在なアンサンブルを響かせるザ・ドードーズ。

 ナチュラルな響きのアコースティック楽器を中心に据え、フォークやカントリーを思わせる耳ざわりでありながら、ロック的なダイナミズムを持っているのも、彼らの特徴です。

 本作『No Color』でも、使用されるサウンドの種類には限りがあるのに、曲ごとに多彩なアンサンブルを構成し、ロック的な迫力あるグルーヴを聴かせてくれます。アルバムを通して、サウンド的にもアレンジ的にも、単調な印象は全くありません。

 1曲目の「Black Night」のイントロから、早速ドタバタと打ち付けるようなドラムのビートが響き、透明感のある繊細なアコースティック・ギターのサウンドが、それに加わります。サウンドとリズムの両面で、両者が溶け合う絶妙なバランス。さらに、流れるようなボーカルのメロディーが、曲に彩りをプラスします。

 ドラムが入っていなかったら、牧歌的な弾き語りの曲になっていそうですが、パワフルでジャンクな雰囲気も醸し出すドラムが、曲に奥行きを与えています。おそらくオーバー・ダビングで、エレキ・ギターらしき音も重ねられているものの、2ピースとは思えない躍動感あふれる1曲。

 2曲目「Going Under」も、臨場感あふれるドラムと、アコースティック・ギターのみずみずしい音色が絡み合う1曲。この曲では、オルタナティヴな雰囲気を持ったエレキ・ギターが効果的に使われています。

 4曲目「Sleep」は、カントリーの香り立つアコギの速弾きと、前のめりに暴発しそうなドラムが疾走していく1曲。使用されている楽器とサウンド・プロダクションはカントリーに近いのに、楽曲の疾走感、躍動感は、ロックが持つそれです。

 6曲目「When Will You Go」は、アコースティック・ギターの繊細な音と、タイトなドラムがグルーヴを生み出していく1曲。

 1stアルバムで、アコースティック・ギターとドラムの2ピースとは思えない迫力のサウンドを響かせ(しかも自主リリース!)、2nd、3rdとサウンドとアレンジの幅を広げてきたドードーズ。今作は、1stアルバム時代の生楽器によるパワフルな躍動感が、戻ってきたアルバムだと思います。

 2ndと3rdでは、楽器とサウンドの種類を増やし、アレンジメントも着実に洗練されていきました。そんな過去2作がおとなしいアルバムというわけではなく、今作はオーガニックな生楽器のサウンドへと原点回帰し、アンサンブルを再構築しようというアルバムのように感じました。

 僕はドードーズが大好きだというのもありますが、彼らの作品にハズレなしです!

 





The Dodos “Time To Die” / ザ・ドードース『タイム・トゥ・ダイ』


The Dodos “Time To Die”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『タイム・トゥ・ダイ』
発売: 2009年9月15日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: Phil Ek (フィル・エク)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの3rdアルバムです。前作『Visiter』に引き続き、ニューヨークのインディペンデント・レーベルFrenchkissからのリリース。

 ドードーズは、アコースティック・ギターとドラムを中心にしたオーガニックなサウンドを持ちながら、音色の少なさを感じさせないカラフルな世界観と、ロック的なダイナミズムを持ったアンサンブルを構成するところが魅力。

 3作目となる今作でも、エレキ・ギターやキーボードなど電気楽器の使用頻度が高まっているものの、独特の立体感のあるドラムとグルーヴ感は健在。

 1曲目「Small Deaths」は、イントロはギターポップのような爽やかなギターとボーカルが印象的。ですが、再生時間0:46あたりでドラムが入ってくると、途端にパワフルでいきいきとした躍動感が生まれます。

 3曲目の「Fables」は、はずむようなリズムとサウンドのアコースティック・ギターと、前のめりにアジテートするように叩きつける迫力あるドラムが、絶妙に絡みあう1曲。ドラムのサウンドが立体的なところもかっこいい。歌のメロディーとハーモニーも美しい。非の打ちどころの無い曲です。

 4曲目「The Strums」は、低音が響き渡るドラムと、重層的なクリーントーンのギターが溶け合う、こちらも美しい1曲。空間系のエフェクターを使用しているのか、ギターの音には揺らぎがあり、サイケデリックな雰囲気も漂います。

 6曲目「Two Medicines」は、タイトルを呪術的に繰り返す、わずかにサイケデリックな香りを放つイントロから、アコギとドラムが絡むこのバンド得意の展開へ。奥の方で鳴るヴィブラフォンの響きも、楽曲を彩っています。

 使用する楽器の種類が増え、サウンド・プロダクションは多彩になっています。しかし、彼らのフィジカルな躍動感は失われず、轟音ギターが唸りをあげる作品ではないのに、ダイナミズムの大きい1作になっています。

 ドラムをはじめ、立体的な音像も素晴らしく、オススメの1枚です。個人的にドードーズが大好きなので、もっと多くの人に聴いてもらいたいと、心から思います。

 





The Dodos “Visiter” / ザ・ドードース『ヴィジター』


The Dodos “Visiter”

ザ・ドードース (ドードーズ) 『ヴィジター』
発売: 2008年3月18日
レーベル: Frenchkiss (フレンチキス)
プロデュース: John Askew (ジョン・アスキュー)

 カリフォルニア州サンフランシスコ出身のバンド、The Dodosの2ndアルバム。前作『Beware Of The Maniacs』は、レーベルを通さない自主リリースでしたが、今作からLes Savy Favのベーシスト、シド・バトラーが設立したニューヨークのレーベル、Frenchkissと契約しています。

 1stアルバムである前作は、アコースティック・ギターとドラムを中心にしたナチュラルなサウンドを用いて、パワフルに躍動感あふれるアンサンブルを響かせた1作でした。今作では、アンサンブルがより洗練され、アコースティックギターが重層的に、ドラムが立体的に音楽を構成する1枚になっています。前作に引き続き、ボーカルの美しいメロディーとハーモニーも、もちろん聴きどころ。

 1曲目の「Walking」は、ゆったりとしたリズムのなか、アコースティックギターとバンジョーが絡み合い、牧歌的な雰囲気を醸し出します。およそ2分の短い曲で、彼ら得意の立体的なサンサンブルも控えめな、イントロダクション的な役割の1曲。

 2曲目の「Red And Purple」では、アコギのコード・ストロークを、低音の響く立体的なドラムが追いかける、彼ら得意のアンサンブルが展開されます。広々とした空気感まで感じられるアコギの響きと、様々な方向から聞こえてくる立体的なドラムが、開放感ある音空間を作り上げています。

 3曲目「Eyelids」は、ギターとドラムが掛け合うイントロから、ボーカルのハーモニーが全体を包み込む、重層的なサウンドが美しい1曲。ドタバタしたドラムのサウンドには、ローファイの香りも漂います。

 4曲目の「Fools」は、リムショットが耳に残り、イントロから疾走感のある1曲。立体的なアンサンブルが彼らの魅力だと思いますが、各楽器が縦を合わせた演奏から、徐々に各楽器が離れていく、この曲のような展開も良い。

 8曲目「Paint The Rust」は、哀愁を帯びたイントロのギターのフレーズが聴こえます。叩きつけるようなドラムが入ってくると、立体的な音像に一変。再生時間1:44あたりからの間奏も、カントリーとインディーロックの融合といった感じで、ルーツと現代性が溶け合った1曲。

 前作同様、アコースティックギターが中心でありながら、サウンド・プロダクションとアレンジはさらに洗練され、カラフルな印象のアルバムに仕上がっています。オーガニックな質感のアコースティック・ギターと、どこかローファイな雰囲気を持つドタバタした音色のドラムのバランスも、前作に引き続き素晴らしいです。