Guided By Voices “Alien Lanes”
ガイデッド・バイ・ヴォイシズ 『エイリアン・レインズ』
発売: 1995年4月4日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Mr. Japan (ミスター・ジャパン)
オハイオ州デイトン出身のバンド、ガイデッド・バイ・ヴォイシズの8枚目のスタジオ・アルバム。フロントマンのロバート・ポラード(Robert Pollard)を中心に1983年に結成され、本作までに7枚のアルバムをリリースしていますが、本作がマタドールからリリースされる1作目のアルバムとなります。
結成当初から各メンバーとも仕事を持ちながら、地元デイトンのバーなどで、地道な活動を続けてきたガイデッド・バイ・ヴォイシズ。オハイオ州クリーブランドのインディー・レーベル、Scat Recordsからリリースされた7作目『Bee Thousand』のディストリビューター(流通・販売)を、マタドールが手がけ、8作目となる今作から正式に契約し、マタドールからの発売となります。
前述したとおり、本作でUSインディーロックを代表する名門レーベル、マタドールと契約するまで、地道な活動を続けており、彼らの初期の作品群は、チープな音質と、テクニックよりも楽しさが前景化した音楽性から、ローファイに括られます。本作以降は、メンバーが音楽活動に専念するために仕事を辞め、徐々に音楽性の幅を広げ、音質も向上。
マタドールからの1作目となる本作は、彼らのローファイな魅力が詰まった、過渡期の作品とも言えるでしょう。28曲収録で、時間は41分。大半の曲は2分以内のコンパクトな構成。ややざらついたローファイな音質で、メロディーとアンサンブルのむき出しの魅力が前景化された、ロックンロールが展開されます。
音圧は高くないのに、ギターの豪快な歪み、ロバート・ポラードのソング・ライティング能力、シンプルなロック的アンサンブルのカッコよさなど、音楽の魅力に溢れたアルバムです。
1曲目の「A Salty Salute」から「ジーー」というノイズを含んだ音質で、各楽器がシンプルながら機能的に絡み合い、感情を絞り出すようなボーカルとも合わさる、ミドルテンポのロックンロールが展開。
2曲目「Evil Speakers」は、テンポはそこまで速くはないのに、各楽器のリズムが絶妙にフックとなり、耳をつかむ1曲です。
4曲目「They’re Not Witches」では、アコースティック・ギターがフィーチャーされ、立体的なアンサンブルとコーラスワークが溶け合い、メロディーの魅力が前面に出てきます。
11曲目「Pimple Zoo」は、ざらついた音色のギターと、やや渇いたシャウト気味のボーカルが先導するロック・チューン。ブリッジ部分ではアコースティック・ギターが用いられ、わずか43秒の1曲ですが、勢いだけではありません。
17曲目「My Valuable Hunting Knife」は、ドラムをはじめとして、各楽器の音がチープで、ローファイの魅力に溢れた1曲。メロディーとアンサンブルが前景化し、音圧の低さと音質のチープさが魅力に転化するお手本のような曲です。
アルバム全体を通して、音質はチープで、楽曲によってばらつきもありますが、音楽性は多彩で、メロディーや各楽器の絡みなど、音楽のコアな魅力を感じられる作品です。音質に頼らないことで、音楽の強度や、音楽を楽しむことが前景化される、ローファイの魅力が存分に含まれたアルバムとも言えます。
ちなみに、2010年版の『死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバム』(1001 Albums You Must Hear Before You Die)に選出されています。