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Chicago Underground Duo “12° Of Freedom” / シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ『12ディグリーズ・オブ・フリーダム』


Chicago Underground Duo “12° Of Freedom”

シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ 『12ディグリーズ・オブ・フリーダム』
発売: 1998年10月20日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 コルネット担当のロブ・マズレク(Rob Mazurek)と、ドラムとパーカッション担当のチャド・テイラー(Chad Taylor)からなるジャズ・デュオ、シカゴ・アンダーグラウンド・デュオの1stアルバム。シカゴの名門インディー・レーベル、スリル・ジョッキーからのリリース。

 スリル・ジョッキー所属のジャズ系グループやミュージシャンというと、アイソトープ217°(Isotope 217°)と、トータスのギタリスト、ジェフ・パーカー(Jeff Parker)が挙げられます。ロブ・マズレクはアイソトープ217°の中心メンバーでもあり、本作には同じくアイソトープ217°のメンバーでもあるジェフ・パーカーが3曲でゲスト参加。

 シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ(並行して「トリオ」「カルテット」と拡大した編成でも作品をリリース)には、スリル・ジョッキー界隈のジャズ系ミュージシャンが結集したグループ、という側面もあります。

 ジャズ的なフレーズやグルーヴを、ポストロック的な手法で再構築していくアイソトープ217°と比較すると、よりジャズ色の濃い音楽を志向しているのが、このグループ。しかし、本作がスリル・ジョッキーからリリースされていること自体が示唆的ですが、ジャズ的なフレーズや即興性を用いつつ、シカゴ音響派を思わせるサウンドも持ち合わせた作品となっています。

 1曲目「The Pursued」は、コルネットとドラムの断片的なフレーズが行き交う、隙間の多い1曲。音数が絞られ、無音部分もあるのですが、それぞれの楽器のプレイには、一瞬のひらめきや疾走感が随所に感じられます。最小単位のスウィング感が提示されるるような、このアプローチ方法は、音響を前景化させる一部のポストロックと、精神性では共通していると言ってもいいでしょう。

 2曲目「Not Quite Dark Yet And The Stars Shining Above The Withered Fields」では、マズレクがピアノ、テイラーがヴィブラフォンを担当。ジェフ・パーカーがギターでゲスト参加しています。ビート感に乏しく、各楽器の音の粒がすれ違い、時に重なり合う、アンビエントな1曲。

 3曲目「January 15th」は、これまでの2曲と打って変わって、ドラムの躍動感あふれるビートと、翼が生えたように飛び回るコルネットが絡み合う、アンサンブルの重視された1曲。コルネットのフレーズも、ステレオタイプにジャズ的で、ノリノリのビバップのようにも聴けます。後半は音数を減らし、アンビエントな雰囲気へ。

 5曲目「Waiting For You Is Like Watching Stillness Grow Into Enormous Wings」は、2曲目と同じく、マズレクがピアノ、テイラーがヴィブラフォン、パーカーがギターという編成。各楽器の音が有機的に絡み合い、幻想的な雰囲気を作り上げていきます。北欧のポストロック・バンドが作りそうな、音響と各楽器の重なり方が美しい1曲です。

 6曲目「Twelve Degrees Of Freedom」は、ドラムとコルネットによる、このデュオの基本となる編成での演奏。ですが、両楽器ともにエフェクト処理がなされ、ポスト・プロダクションを強く感じる、言い換えればポストロック色の濃い1曲。ややフリーキーで、奥まった音質の両者が、吹き荒れる風のようにテンポを変えながら、フレーズを繰り出していきます。

 8曲目「Gratitude」は、コルネットとヴィブラフォンが音を紡ぎ出していく、幻想的な1曲。コルネットのフレーズは、ジャズのマナーに沿っていますが、全体のサウンド・プロダクションは、音響系ポストロックのように柔らかくアンビエント。

 1stアルバムということで、まだコンセプト先行で手探り状態の印象も受けますが、スリル・ジョッキーらしい風通しの良さと、新しさのある作品です。

 メンバーのロブ・マズレク、また本作にゲスト参加しているジェフ・パーカーは、ソロ作品も含め、多くのプロジェクトに参加しています。他のグループや作品と比べながら聴くのも、リスニングの楽しみを広げてくれることでしょう。

 





Pullman “Turnstyles & Junkpiles” / プルマン『ターンスタイルズ・アンド・ジャンクパイルズ』


Pullman “Turnstyles & Junkpiles (Turnstyles And Junkpiles)”

プルマン 『ターンスタイルズ・アンド・ジャンクパイルズ』
発売: 1998年8月11日
レーベル: Thrill Jockey (スリル・ジョッキー)

 トータスやガスター・デル・ソルでの活動でも知られるバンディー・K・ブラウン(Bundy K. Brown)や、同じくトータスやブロークバックでの活動で知られるダグ・マッカム(Doug McCombs)を中心に、ポストロックおよびスロウコアなど、各ジャンルでキャリアのある4人が結集したバンド、プルマン。

 ちなみにこのバンドの活動はスタジオでのレコーディングのみで、ライブ活動はおこなっていません。

 本作は、1998年にリリースされた彼らの1stアルバム。前述のトータスらが在籍し、シカゴのポストロックの総本山とも言えるレーベル、スリル・ジョッキーからのリリース。デイヴィッド・パホ(David Pajo)が1曲でゲスト参加するなど、こちらの界隈が好きな人にとっては、聴く前から嫌が応にも期待が高まります。僕もそのひとり。

 期待と共に本作を再生すると、アコースティック・ギターを中心に据えたナチュラルなサウンドを用いて、多彩なアンサンブルが展開。アコギ中心というと、フォークやカントリーがまず頭に浮かびます。

 しかし、本作で展開されるのは、単なるカントリーのアップデート版とは違って、「アコースティック・ギターを用いたグッド・ミュージック」とでも呼びたくなるような、多様なジャンルを参照し、結果的にジャンルレスとなった音楽。あるジャンルを参照しつつも、その先に向かっているという意味では、ポストロック的と言ってもいいでしょう。

 1曲目の「To Hold Down A Shadow」から、アコースティック・ギターを中心に据えたオーガニックなサウンドで、各楽器が穏やかに絡み合い、躍動する、有機的なアンサンブルが展開されていきます。

 2曲目「Barefoot」は、複数のギターが、それぞれそよ風のように流麗なフレーズを弾く、吹き抜けるような疾走感のある1曲。フレーズ同士が重なるときに生まれるハーモニーに、どこか不安定な部分があり、そこが音楽の深みを増し、またジャンルレス感をも演出しています。

 3曲目「In A Box, Under The Bed」も、2曲目「Barefoot」に続いて、複数のギターが折り重なるように音楽を組み上げていく1曲。

 5曲目「Gravenhurst」には、バンディー・K・ブラウンと入れ替わりでトータスに加入したことでも知られるデイヴィッド・パホが参加。透き通るような音色のアコースティック・ギターによるシンプルなフレーズを中心に、穏やかなアンサンブルが展開される1曲。

 6曲目「Lyasnya」は、ここまでのアルバムの流れとは異質な、軽快な3拍子に乗せて、メロディアスなフレーズが繰り出される1曲。リズムがはっきりとしているため、ダンサブルに響きます。

 9曲目「Deer Hill」は、音の動きの少ないミニマルなフレーズが押し寄せる、音響が前景化した1曲。

 アルバム全体と通して、アコースティック・ギターを中心にした穏やかなサウンド・プロダクションを持っていますが、前述したとおり音楽の幅は広く、ジャンルレスで風通しの良い作品です。

 「シカゴ音響派」という言葉もありますが、まさに本作は「音響派」と呼びたくなる、音の響きを追求したストイシズムが感じられる1作。と書くと、なんだかハードルが高い音楽であるかのようですが、実際に鳴っている音は、音響を追求しているからこそ、リラクシングで心地よく、深い意味でポップな作品であると思います。

 通常は14曲収録ですが、徳間ジャパンからリリースされた日本盤にはボーナス・トラック5曲が追加され、19曲収録となっていました。

 





The Jon Spencer Blues Explosion “Acme” / ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン『アクメ』


The Jon Spencer Blues Explosion “Acme”

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン 『アクメ』
発売: 1998年10月20日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Calvin Johnson (カルビン・ジョンソン), Steve Albini (スティーヴ・アルビニ), Suzanne Dyer (スザンヌ・ダイアー), Greg Talenfeld (グレッグ・タレンフェルド)

 元プッシー・ガロアのジョン・スペンサーを中心に結成されたバンド、ベースレスの3ピース・バンド、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの6枚目のスタジオ・アルバム。

 バンド名が示唆するとおり、ブルースをモダンな形で再解釈するこのバンド。ブルースを下敷きにして、ガレージ・ロック、パンク、ローファイなど、多様な音楽の要素が合わさり、コンパクトにまとめ上げるのが、このバンドの魅力であり特徴と言えます。

 6作目となる本作でも、ブルージーなフレーズが、ガレージ的なざらついた歪みのギター・サウンド、ファンクを彷彿とさせる粘っこいグルーヴ感、アングラ臭の漂うシャウトなどと溶け合い、ジョンスペ特有のロックが展開。

 初期の頃に聞かれた、プッシー・ガロアを彷彿とさせるジャンクな音色も健在ですが、楽曲はコンパクトに、グルーヴ感を持って、まとまっています。

 基本的には「進化」「洗練」とポジティヴに捉えるべき変化だと思いますが、プッシー・ガロア時代の愛すべき糞ロックといった音楽性を求める方には、「落ち着いてしまった」「つまらなくなった」と感じられるかもしれません。実を言うと、僕もそのクチです(笑)

 とはいえ、3人で作り上げる糸を引くようなグルーヴ感は健在…というより、ますます機能的で、気持ちよくなってきていて、音楽としてのクオリティが低いわけでは、決してありません。

 アルバム6枚目ともなれば、ある程度のマンネリ化や、落ち着きも仕方ないと思いますが、このバンドは本作に至っても、悪ふざけ感を持っていて、シリアスになりすぎないところが魅力。

 ミュージック・ビデオも制作された5曲目の「Talk About The Blues」を例に取ると、シンプルなアンサンブルの中に、ノイジーなギターと、ジャンクなボーカルが乗り、ロックが持つグルーヴ感と、アンダーグラウンドな空気が、程よくミックスされて充満しています。

 





Liz Phair “Whitechocolatespaceegg” / リズ・フェア『ホワイトチョコレートスペースエッグ』


Liz Phair “Whitechocolatespaceegg”

リズ・フェア 『ホワイトチョコレートスペースエッグ』
発売: 1998年8月11日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Brad Wood (ブラッド・ウッド), Jason Chasko (ジェイソン・チャスコ), Scott Litt (スコット・リット)

 コネチカット州ニューヘイヴン生まれ、イリノイ州シカゴ育ちのシンガーソングライター、リズ・フェアの3rdアルバム。

 これまでの2作と同様、ニューヨークのインディペンデント・レーベル、マタドールからのリリースですが、本作を最後にメジャーのキャピトル(Capitol Records)へ移籍。本作がマタドールからリリースされる最後のアルバムとなります。

 プロデュースは、前2作に引き続きブラッド・ウッドも起用されていますが、楽曲によってジェイソン・チャスコとスコット・リットも担当する、分担制のような形になっています。

 シンプルでローファイ風の音像を持った1st、ポストロックすら感じさせるサウンドの幅の拡大があった2nd。そして、3rdアルバムとなる本作では、2ndで聴かれたポストロック性と実験性が後退し、古き良きアメリカン・ロックを感じさせる1枚となっています。

 個人的には2ndのポストロック的な意外性のあるサウンドは、シュリンプ・ボートの元メンバーでもあるブラッド・ウッドのプロデュースによるところが大きいのではないかと考えていますが、前述したとおり本作ではウッドも含めた3人のプロデューサーが迎えられており、よりスタンダードな音作りになったんじゃないかなと思います。

 アコースティック・ギターや、豊かな歪みのギターがアンサンブルの中心に据えられ、ゆるやかなグルーヴ感を持ったロックが展開。

 1曲目の「White Chocolate Space Egg」は、ジェイソン・チャスコのプロデュース。ゆったりとしたテンポに乗って、手数を絞ったリズム隊と、空間系のエフェクターのかかった浮遊感のあるギターが、グルーヴ感を生んでいきます。サビ部分では、ディストーション・ギターも加わり、カントリー要素とオルタナ要素が融合した1曲。

 2曲目の「Big Tall Man」も、引き続きジェイソン・チャスコのプロデュース。本作でチャスコがプロデュースを担当するのは、この2曲だけです。いきいきと躍動していく、ロックンロールの魅力が詰まった1曲。

 3曲目「Perfect World」は、R.E.M.のアルバムを手がけたことで知られるプロデューサー、スコット・リットによるプロデュース。この曲では、キーボードとヴァイオリンも弾いています。アコースティック・ギターのアルペジオと歌を中心にしながら、ヴァイオリンとキーボードが立体感をプラスしていくアンサンブル。

 4曲目「Johnny Feelgood」は、ブラッド・ウッドのプロデュース。イントロからシンセサイザーと思われる電子的なサウンドが使われていて、カントリーとオルタナティヴ・ロックが溶け合ったような、前作を彷彿とさせる1曲。多様な音が立体的に、賑やかにアンサンブルを構成していきます。ここから先は、ブラッド・ウッドとジェイソン・チャスコがほぼ半々の割合でプロデュースを担当。

 7曲目「Baby Got Going」は、ハーモニカによるブルージーな空気と、電子音と激しく歪んだギターによるオルタナティヴな空気が共存する1曲。プロデュースはスコット・リット。

 11曲目「Headache」は、打ち込みかシンセサイザーか、電子音を中心にアンサンブルが構成されていきます。息を吸い込んでから吐く音も使われ、ギターや鍵盤も綿密に組み上げられているようで、ポスト・プロダクションを強く感じる1曲。

 12曲目「Ride」は、馬が走るようなリズムを持った、疾走感のある1曲。ドラムとアコースティック・ギターが中心ですが、空間系のエフェクターを使ったエレキ・ギターがアクセントになり、カントリー風の音像に、オルタナティヴな空気をプラスしています。

 13曲目「What Makes You Happy」は、細かい音が降り注ぐイントロから始まり、立体的なアンサンブルが展開される1曲。再生時間0:45あたりからのコーラス部分で、一変するアレンジも、コントラストが鮮やか。

 前作よりも、ポストロック性、オルタナティヴ性は、やや控えめになり、ブルースやカントリーなどのルーツ・ミュージック色が濃くなったアルバムと言えますが、ただの焼き直しではなく、随所に現代的なアレンジが加えられ、古さは感じません。

 リズ・フェアの歌が中心にあるのは言うまでもありませんが、曲によってはオルタナ・カントリーと呼びたくなるサウンドを持っており、アレンジ面でも聴きどころの多いアルバムと言えます。

 





Bluetip “Join Us” / ブルーチップ『ジョイン・アス』


Bluetip “Join Us”

ブルーチップ 『ジョイン・アス』
発売: 1998年10月1日
レーベル: Dischord (ディスコード)
プロデュース: J. Robbins (J・ロビンス)

 元スウィズ(Swiz)のメンバーである、デイヴ・スターン(Dave Stern)と、ジェイソン・ファレル(Jason Farrell)を中心に結成されたバンド、ブルーチップの2ndアルバム。

 プロデューサーは、前作のイアン・マッケイに代わって、J・ロビンスが担当。このJ・ロビンスという人は、本名ジェームス・ロビンス(James Robbins)。ジョーボックス(Jawbox)などで自らもバンド活動をする傍ら、プロデューサーおよびエンジニアとしても有名です。

 前作『Dischord No. 101』に引き続き、実にディスコードらしいポスト・ハードコアなアルバムと言えます。とはいえ、ジャンル名だけでは、実際にどのような音楽が鳴っているのか、何も語っていないのと同然ですから、このアルバムの志向する音楽、個人的に聴きどころだと思う魅力について、書いていきたいと思います。

 単純化が過ぎるのを恐れずに言うなら、ハードコア・パンクは、歌のメロディーやバンドのアンサンブルよりも、スピード感を重視した音楽だと、ひとまず定義できるでしょう。そのため、複雑なリフやアレンジよりも、高速でシンプルなリフやパワーコードが多用される傾向にあります。

 また、限界まで速度を上げたテンポ、過度に歪んだ硬質なギター・サウンドなど、サウンド面で(時には歌詞の面でも)攻撃性が際立っているのも、特徴と言えます。

 ブルーチップの2枚目のアルバムとなる本作では、歪んだギター・サウンドが用いられてはいますが、疾走感やハイテンポよりも、バンドの複雑なアンサンブルの方が重視され、歌のメロディーも起伏があり、コントラストが鮮やか。ハードコアの攻撃性と、グルーヴ感あふれる演奏、歌メロの魅力が、見事に溶け合った1作です。

 複雑なアンサンブルによって、テンポを上げるのみでは表現できない攻撃性や、感情を表しているようにも思え、まさにポスト・ハードコアと呼ぶにふさわしいクオリティを備えたアルバムであると言えます。

 1曲目の「Yellow Light」から、段階的にシフトを上げていく、多層的で弾むようなアンサンブルに乗せて、流れるようなメロディーが紡がれていきます。躍動感と疾走感、シングアロングしたくなるような親しみやすいメロディーが共存した1曲です。

 2曲目「Cheap Rip」は、ざらついた質感のギターを中心に、タイトなアンサンブルが展開される1曲。随所でリズムを切り替え、伸縮するように躍動しながら、進行していきます。

 3曲目「Join Us」は、金属的な響きのギターが、キレ味鋭くリフを弾き、立体的なアンサンブルが形成。各楽器がお互いにリズムを食い合うように重なり、生き物のように躍動感と一体感のある演奏が、繰り広げられます。

 5曲目「Carbon Copy」は、スローテンポで、音数も少なめ。無駄を削ぎ落とし、一音ごとの重みを増し、ゆっくりと地面に沈んでいくようなアンサンブルが展開。スロウコアが目指すようなアプローチの1曲。

 6曲目「Salinas」は、ハードに歪んだギターと、シャウト気味のボーカルが絡み合う、立体的でパワフルな1曲。

 8曲目「I Even Drive Like A Jerk」は、ギターは毛羽立ったように歪み、ボーカルも感情を叩きつけるように歌い、全体としてアングラな雰囲気を持っています。静と動のコントラストが鮮烈で、ダイナミズムの大きい1曲。

 9曲目「Bad Flat」は、ゆったりとしたテンポで、各楽器の音数も控えめ。ボーカルも感情を排したかのような歌い方で、随所にスポークン・ワードが挟まれます。しかし、後半になると、歌とギターが、メロディーの起伏ではなく、歌い方とサウンドに感情を込めるように、エモーショナルに音を紡いでいきます。

 1stアルバムと比較しても、楽曲とアレンジの幅が確実に広がったアルバムです。音質はハードでソリッドですが、音量や速度だけに頼ることはなく、テンポを落とし、アンサンブルと各楽器のフレーズを前景化させるように、丁寧に作り上げられたアルバム、という印象。

 特に一部の曲では、スローテンポに乗せて、音数を絞った演奏が展開され、各楽器が絡み合い、有機的なアンサンブルを構成する彼らの志向が、あらわれていると思います。