My Morning Jacket “At Dawn”
マイ・モーニング・ジャケット 『アット・ドーン』
発売: 2001年4月6日
レーベル: Darla (ダーラ)
ケンタッキー州ルイヴィル出身のオルタナ・カントリー・バンド、マイ・モーニング・ジャケットの2ndアルバム。前作『The Tennessee Fire』に引き続き、サンディエゴのインディーズ・レーベル、ダーラからのリリースです。
CDでは初回2500枚限定、レコードでは初回1000枚限定で、デモ音源11曲を収録したボーナス・ディスクが付属。このデモ音源は、1stアルバムのデモ音源と併せて、2007年に『At Dawn/Tennessee Fire Demos Package』としてもリリースされています。
デビュー・アルバムとなる前作では、カントリーを下敷きにしながら、アコギやボーカルにもリヴァーブをかけ、音響的アプローチを施したカントリー・ミュージックを響かせていたマイ・モーニング・ジャケット。2作目となる本作では、前作同様に音響的なアプローチも健在ですが、サウンド・プロダクションがよりソリッドになり、アレンジのオルタナ性が強まっていると思います。
リヴァーブを筆頭に音響的なアプローチの目立った前作に比べて、サウンドの輪郭がはっきりし、アンサンブルが前景化されたのが本作と言えます。カントリーの持つ穏やかなメロディーと牧歌的な雰囲気が、前作よりも多彩なアレンジでオルタナティヴ性と溶け合い、現代的にアップデートされています。
1曲目「At Dawn」は、音響系ポストロックやエレクトロニカを彷彿とさせるアンビエントなイントロから、やがてトライバルな太鼓のリズムが加わり、再生時間1:40あたりから突如としてメロディアスなボーカルが入ってきます。しかし、展開には無理がなく、ポストロック的なアプローチと、ルーツ・ミュージックの魅力が融合した、本作を象徴する1曲と言えます。
2曲目「Lowdown」は、各楽器とボーカル及びコーラスが絡み合い、緩やかなスウィング感のある1曲。前作を彷彿とさせるリヴァーブの効いたコーラスワークが、耳に心地よく響きます。
3曲目「The Way That He Sings」は、エフェクトは控えめに、ナチュラルな音色の各楽器が有機的に絡み合う、アンサンブルが前面に出た1曲。特にドラムとアコースティック・ギターは、生々しくリアリティのある音色で響きます。
5曲目「Hopefully」は、電子的な持続音と、アコースティック・ギターが溶け合う1曲。耳に残るドローンと、牧歌的なアコギとボーカルが、絶妙なバランスで融合し、奥行きのあるサウンドを作り上げます。
6曲目「Bermuda Highway」は、リヴァーブのかかったボーカルとアコースティック・ギターによる、浮遊感のある幻想的な1曲。歌のメロディーと音響的なサウンドの相性もすばらしく、メロディーとサウンドが互いに浮遊感を際立たせ合っています。
7曲目「Honest Man」は、各楽器が絡み合いながら、ゆったりと進行していくサザン・ロック色の濃い1曲。リズムにタメがあり、余裕たっぷりにグルーヴ感を生み出していきます。再生時間1:58からの間奏で、ファットで粘り気のあるギターと、ハイの上がったノイジーなギターが絡み合うところも、ブルージーな空気とアヴァンギャルドな空気が共存していて、このバンドらしいアレンジだと思います。
11曲目「I Needed It Most」は、複数のギターが絡み合うアンサンブルに、伸びやかなボーカルが乗る1曲。アコースティック・ギターと歌が中心で、編成としてはアコギの弾き語りに近いのですが、リヴァーブの深くかかったサウンド・プロダクションが、幻想的な雰囲気を演出しています。
「音響的アプローチを施したカントリー」といった趣の前作から比較すると、2作目となる本作では、音楽性の面でもサウンド・プロダクションの面でも、確実に表現の幅が広がっています。牧歌的なカントリー、サザン・ロック、サイケデリック・ロックといった彼らのルーツであろう音楽を消化し、オルタナティヴなアレンジを施し、オリジナリティ溢れる音楽を作り上げています。
また、ポップな歌モノとしての大衆性と、ポストロックやエレクトロニカが持つ実験性が、バランスよく融合し、ポップ・ミュージックとして高い完成度で成り立っているところも、本作の魅力です。