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Clap Your Hands Say Yeah “Clap Your Hands Say Yeah” / クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー『クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー』


Clap Your Hands Say Yeah “Clap Your Hands Say Yeah”

クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー 『クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー』
発売: 2005年6月28日
レーベル: Self-released (自主リリース)
プロデュース: Adam Lasus (アダム・ラサス)

 コネティカット・カレッジ(Connecticut College)在学中に出会った5人が、2004年にニューヨークで結成したインディー・ロック・バンド、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー。

 本国アメリカでは特定のレーベルには所属せず、デビュー・アルバムである本作『Clap Your Hands Say Yeah』も、レーベルを通さない自主リリース。文字通り、インディペンデントな精神を持ったバンドです。

 ただ、本作に関して言えば、イギリスやヨーロッパではウィチタ(Wichita)、日本ではユニバーサルミュージック傘下のレーベルであるV2からリリースされるなど、世界規模のヒットに伴って、地域ごとにディストリビューションを個別のレーベルに任せています。

 その精神性と活動形態のみならず、音楽からも非メジャー的な香りが漂う、根っからのインディー・ロック・バンド。そう自信を持って呼べるのが、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーです。

 では「非メジャー」と言っても、具体的にどんな音楽を指すのか。簡単に私見を述べさせていただきます。まず、2000年代以降の一部のインディーズ・バンドに見られる方法論は、激しく歪んだギターによるリフや、ノリの良い8ビートなど、それまでのロック的なアレンジを避けていること。

 結果として、旧来のロックには無い、新たなグルーヴ感を獲得したり、サウンドの面ではフォーク・ロックに接近したり、民俗音楽的・実験音楽的になったり、というのが2000年代における、インディー・ロックのひとつの特徴です。もちろん「インディーロック」という言葉自体が、意味が広く、定義するだけでも困難ですから、ひとつの個人的な解釈として捉えてください。

 1980年代にポストパンクから、ワールド・ミュージックへと繋がった、ロックから非ロックへの流れ。その流れと似たような現象が、1990年代のオルタナティヴ・ロックから、オルタナ・カントリーや2000年代のインディーロックへと繋がる過程にも認められるのではないか、というのが僕の考えです。

 さて、話をクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーに戻しましょう。彼らの音楽性も、いわゆるロック的なサウンドやアレンジとは、大きく異なり、オルタナティヴ民俗音楽、あるいは無国籍なワールド・ミュージックとでも呼びたくなるもの。

 デビュー・アルバムとなる本作でも、ハードなギターや、縦ノリしやすいリズムといった、ロックのクリシェを巧みにすり抜けつつ、新しいサウンド・プロダクションとグルーヴ感を提示しています。

 1曲目の「Clap Your Hands!」は、アルバムのイントロダクションとなる、2分弱の楽曲。賑やかで楽しい音楽に対して「おもちゃ箱をひっくり返したような」と形容することがありますが、この曲はまさにそのとおり。全体がトイピアノ的な、チープで可愛いサウンド・プロダクションで、おどけたボーカルも相まって、おもちゃ箱をひっくり返したというよりも、おもちゃそのものと言ってもいい曲です。

 2曲目の「Let The Cool Goddess Rust Away」は、ギター、ベース、ドラムと全ての楽器がリズムにフックを作りながら、躍動していく1曲。サウンドもリズムも、ゴリゴリのロックとは異なるのですが、ロックが持つダイナミズムの大きな躍動感が、演奏からは溢れています。1曲目の「Clap Your Hands!」と同じく、各楽器の音作りとフレーズは、ややチープで親しみやすい耳ざわりのものが多いのですが、全ての楽器が有機的に組み合い、いきいきとしたアンサンブルを展開。

 3曲目「Over And Over Again (Lost And Found)」は、音数を絞り、タイトでミニマルなアンサンブルが展開される1曲。各楽器のフレーズはシンプル。ドラムの手数も少なく、特に難しいことはしていないのに、ノリと加速感がある不思議な演奏。

 6曲目「The Skin Of My Yellow Country Teeth」は、滲んだような音色のシンセサイザーに、タイトで立体的なドラム、はずむように瑞々しいギターとベースが加わり、バンド全体がバウンドするように進行していく1曲。この曲も、わかりやすく難しいことはしていないはずなのに、全ての音とフレーズが心地よく、バンドが一体の生き物のように、躍動しています。

 7曲目「Is This Love?」では、歯切れの良いギターのカッティングに導かれ、浮遊感と疾走感のある演奏が、繰り広げられます。キーボードの電子的で柔らかい音質、声が裏返りながらも絞り出すボーカルの歌唱も、楽曲にカラフルさをプラス。クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー流のギターポップ。

 8曲目は「Heavy Metal」。タイトルのとおり、彼らにしてはハードな音像を持った曲ですが、もちろん一般的なヘヴィメタルとは異なるサウンドとアレンジ。荒々しく疾走するバンド・アンサンブルと、声を裏返しながら歌うボーカルからは、ローファイやガレージロックを感じなくもないですが、やはりカテゴライズ不能の個性的な楽曲です。

 10曲目「In This Home On Ice」は、空間系エフェクターを用いて、ギターが厚みのあるサウンドを作り上げ、ボーカルもギターに埋もれるように漂う、シューゲイザー色の濃い1曲。ボーカルも含めて、全ての楽器が、ひとつの塊のように一体となり、心地よい揺らぎのある演奏。

 多彩な楽曲が収録されているのに、どの曲もハッキリとしたジャンル分けがしにくい、個性的な曲ばかり。しかも、敷居の高いアヴァンギャルドな音楽をやっているわけではなく、出てくる音はどこまでもポップです。

 先ほど「根っからのインディー・ロック・バンド」と書きましたが、単純にメジャー・レーベルに背を向けているということではありません。音楽性においても、今までのロックの構造に頼らず、全く新しい設計図を一から作り上げています。深い意味でインディペンデントであり、オルタナティヴなバンドだと言えるでしょう。

 折衷的にも実験的にもならず、これまでに誰も作らなかった音楽を作り上げる、驚くべき創造力を持ったバンドです。この後の作品も良いのですが、思い入れも込みで、個人的にはこの1stアルバムがオススメ! 名盤です。

 





The White Stripes “Elephant” / ザ・ホワイト・ストライプス『エレファント』


The White Stripes “Elephant”

ザ・ホワイト・ストライプス 『エレファント』
発売: 2003年4月1日
レーベル: Third Man (サード・マン)
プロデュース: Liam Watson (リアム・ワトソン)

 ギター・ボーカルのジャック・ホワイトと、ドラムのメグ・ホワイトからなる、ミシガン州デトロイト出身のガレージロック・バンド、ザ・ホワイト・ストライプスの4thアルバム。

 前作までは、ガレージやブルースを得意とするインディーズ・レーベル、Sympathy For The Record Industryからのリリースでしたが、本作はユニバーサル傘下のレーベルV2、およびジャック・ホワイトが設立したレーベルであるサード・マンからリリースされています。

 レコーディング・エンジニアとミキシングを務めるのは、イギリス人のリアム・ワトソン。レコーディングも、ロンドンにあるBBCのマイダ・ヴェール・スタジオ(Maida Vale Studios)と、ワトソンが所有するトゥー・ラグ・スタジオ(Toe Rag Studios)にて実施されました。

 2004年の第41回グラミー賞において、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞(Best Alternative Music Album)を受賞し、ホワイト・ストライプスを世代を代表するバンドへと押し上げる、出世作となった本作。

 ブルースやカントリーなどルーツ・ミュージックを参照しながら、ガレージ・ロックのざらついた音色とダイナミズムを、現代的にアップデートする手法は、ますます洗練され、完成度を高めています。

 「現代的にアップデート」と書くと抽象的ですが、具体的にはブルースやガレージロックをコピーするだけでなく、多様なジャンルを組み合わせ、自分たちオリジナルの音楽を作り上げているということ。このような方法論には、90年代にオルタナティヴ・ロックの時代をくぐり抜けてきたバンドであることが垣間見えます。

 シングルとしても発売され、グラミーの最優秀ロック・ソング賞(Grammy Award for Best Rock Song)を獲得し、世界的なヒットとなった「Seven Nation Army」を筆頭に、ジャック・ホワイトのギタープレイとソング・ライティングも冴え渡っています。

 「Seven Nation Army」はアルバムの幕を開ける1曲目に収録。ドタドタとシンプルに四つ打ちを続けるドラムに、激しくそして自由なギターが合わさり、シンプルなリズムの魅力と、楽譜からはみ出すフリーなフレーズの魅力が融合。ロックのシンプリシティと即興性を併せ持つ、キラー・チューンに仕上がっています。

 2曲目の「Black Math」は、リズムが前のめりに疾走するガレージ・ロック。しかし、ただ直線的に突っ走るだけでは終わらず、途中テンポで緩急をつけ、コントラストを演出。奥行きのあるアレンジとなっています。

 3曲目「I Just Don’t Know What To Do With Myself」は、イギリス出身のシンガー、ダスティ・スプリングフィールド(Dusty Springfield)が1964年にリリースした曲のカバー。オリジナル版は、ポップでスウィートな仕上がりですが、ホワイト・ストライプスはゴリっとしたガレージらしいギターに、ゴスペルを思わせる壮大なコーラスワークを重ねたアレンジに仕上げています。原曲のスウィートな魅力を残しつつ、凝ったコーラスワークと、激しく歪んだギターが溶け合い、サイケデリックな空気も漂う1曲。

 6曲目「I Want To Be The Boy To Warm Your Mother’s Heart」は、ピアノをフィーチャーしたメロウな1曲。しかし、ただのピアノ・バラードではなく、ぶっきらぼうなドラムと、ガレージ色の濃いざらついた歪みのギターを合わせています。間奏のスライド・ギターもブルースとカントリーの香りをプラスし、ピアノを用いた壮大なバラードではなく、ホワイト・ストライプスらしい多彩な1曲に。

 8曲目「Ball And Biscuit」は、音数を絞ったミニマルなアンサンブルから、ブルージーなフレーズが浮き上がり、前景化される1曲。ジャンルのコアな部分の魅力を浮き彫りにする、ホワイト・ストライプスらしいアレンジ。再生時間1:47あたりからのギターソロは、耳と脳を揺らすようにパワフルで、根源的な魅力に溢れています。

 9曲目「The Hardest Button To Button」では、シンプルな四つ打ちのドラムに、ギターのフレーズとボーカルが重なり、シンプルながら躍動感とグルーヴ感のある演奏が展開。

 12曲目「The Air Near My Fingers」は、60年代のガレージ・ロックとサイケデリック・ロックが融合したような、激しさとねじれを持った1曲。

 もはや語ることが残ってないぐらいに、評価され、語られてきた名盤ですが、あらためて聴いてみてもやはり名盤! 「ブルースを下敷きにしたガレージロック」というのは、彼らの音楽性を説明するときの常套句ですが、ブルースはじめルーツ・ミュージックを巧みに取り込んでいるのは事実です。

 ブルースの粘り気のあるフレーズ、ガレージロックの荒々しさ、カントリーの軽快な疾走感など、各ジャンルのコアな魅力を、オルタナティヴ・ロックの折衷性を持ってまとめていくセンスと手法は、見事と言うほかありません。

 あとは、各ジャンルを横断しつつ、自らのオリジナリティをしっかりと出すジャック・ホワイトのギタープレイは、やはり秀逸だなと。僕が言うまでもないことですが、未来に残すべき名盤です。

 





The White Stripes “White Blood Cells” / ザ・ホワイト・ストライプス『ホワイト・ブラッド・セルズ』


The White Stripes “White Blood Cells”

ザ・ホワイト・ストライプス 『ホワイト・ブラッド・セルズ』
発売: 2001年7月3日
レーベル: Sympathy For The Record Industry (シンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリー)
プロデュース: Stuart Sikes (スチュアート・サイクス)

 ミシガン州デトロイト出身のガレージロック・バンド、ザ・ホワイト・ストライプスの3rdアルバム。メンバーは、ギター・ボーカルのジャック・ホワイトと、ドラムのメグ・ホワイトの2人。

 ガレージロックを得意とするインディペンデント・レーベル、Sympathy For The Record Industryと、ユニバーサル傘下のメジャー・レーベル、V2レコードより発売。

 カントリー歌手ロレッタ・リン(Loretta Lynn)に捧げられており、本作からのシングル『Hotel Yorba』には、リンの楽曲「Rated X」のカバーが収録されています。

 また、レコーディング・エンジニアを務めるのは、スチュアート・サイクス。2005年のグラミー最優秀カントリー・アルバム賞を受賞する、ロレッタ・リン『Van Lear Rose』のミキシングを手がける人です。ちなみに同作は、ジャック・ホワイトがプロデュースを担当し、ギターやバッキング・ボーカルでレコーディングにも参加しています。

 デビュー当初は、ギターとドラムのみのパワフルな演奏で、ロックの初期衝動をそのまま音に変換したかのようなサウンドを、響かせていたホワイト・ストライプス。3作目となり、ざらついたガレージ的な音色はやや控えめ。音楽的には、確実に洗練されています。

 ブルースを下敷きにしたガレージロック、という基本的なアプローチはこれまで通り。また、本作収録曲の歌詞の多くは、1stアルバム『The White Stripes』の時期のもの、およびジャックが当時ホワイト・ストライプスと並行して在籍していたバンド、トゥー・スター・タバナクル(Two-Star Tabernacle)のために書いたものとのこと。

 しかし、音楽的には原点回帰というわけではなく、より多彩なルーツ・ミュージックを取り込みながら、90年代以降のオルタナティヴ・ロックに繋がるアレンジと音像を持っているのが本作です。

 過去2枚のアルバムは、いずれも地元デトロイトでレコーディングされていましたが、本作はテネシー州メンフィスにあるスタジオ、イーズリー・マケイン・レコーディング(Easley McCain Recording)で、レコーディングを実施。これまでのざらついた音色に比べ、サウンド・プロダクションが異なって聞こえるのは、レコーディング・スタジオの変更も一因でしょう。

 1曲目「Dead Leaves And The Dirty Ground」は、ゆったりとしたテンポに乗せて、ざらついた音色のギターと、手数の少ないドラムによって、リラックスしたアンサンブルが展開される1曲。プリミティヴな音作りとアンサンブルという、これまでのホワイト・ストライプスの良さを残しながら、良い意味で力の抜けた演奏になっています。

 2曲目「Hotel Yorba」は、アコースティック・ギターによる軽快なコード・ストロークと、ドラムのドタドタ叩きつけるリズムが躍動感を生む、カントリー色の濃い1曲。

 4曲目「Fell In Love With A Girl」は、ギターもドラムも小節線を乗り越えるように、前のめりに疾走していく曲。ガレージロックと呼ぶにふさわしい、毛羽立ったサウンド・プロダクションの曲ですが、演奏は軽やかな疾走感があります。

 5曲目「Expecting」は、スローテンポのガレージロック。ゆったりとしたテンポに乗って、リズムにフックを作りながら、グルーヴ感を生んでいきます。

 9曲目「We’re Going To Be Friends」は、アコースティック・ギターがフィーチャーされた牧歌的な1曲。ジャック・ホワイトの歌唱も、語りかけるように穏やか。奇をてらうことなく、歌にフォーカスした、カントリー色の濃い演奏です。

 12曲目「Aluminum」は、ノイジーなギターと呪術的なコーラスが場を支配する、アヴァンギャルドな1曲。ガレージロックよりも、ソニック・ユースなどニューヨークのアングラ臭を感じる演奏。

 13曲目「I Can’t Wait」は、ゆったりとしたテンポに乗せて、ざらついたサウンドの各楽器が絡み合い、アンサンブルを構成する、ホワイト・ストライプスらしいガレージロック。

 前述のとおり、カントリー歌手のロレッタ・リンに捧げられた本作。それだけが理由というわけでもないのでしょうが、これまでのアルバムと比較すると、ややカントリー要素が強めでしょうか。

 しかし、たんにカントリー色が濃くなっただけでなく、12曲目「Aluminum」のような、オルタナティヴ要素の強い実験的な曲もあり、音楽性の幅は確実に広がっています。

 1stアルバムから本作までの3枚のアルバムは、いずれもガレージ・ロックを得意とするレーベル、Sympathy For The Record Industryからのリリース。

 しかし、4作目となる次作『Elephant』から、ユニバーサル・ミュージック傘下のV2、およびジャック・ホワイトは自身で設立したレーベル、サード・マン(Third Man Records)よりリリースされます。

 





The White Stripes “De Stijl” / ザ・ホワイト・ストライプス『デ・ステイル』


The White Stripes “De Stijl”

ザ・ホワイト・ストライプス 『デ・ステイル』
発売: 2000年6月20日
レーベル: Sympathy For The Record Industry (シンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリー)

 ミシガン州デトロイト出身のガレージロック・バンド、ザ・ホワイト・ストライプスの2ndアルバム。タイトルになっている『De Stijl』の読み方は「デ・ステイル (də ˈsteɪl)」。

 「De Stijl」とは、1917年から1931年の間にオランダで起こった、芸術運動に由来しています。ちなみに「De Stijl」を、英語に訳すと「the style」。

 2000年代に起こった、ガレージロック・リバイバルを代表するバンドのひとつに数えられるホワイト・ストライプス。

 メンバーは、ギター・ボーカルのジャック・ホワイトと、ドラムのメグ・ホワイトの2人。基本はギターとドラムのみという2ピース編成で、ブルースを下敷きにしたガレージ・ロックを、独特のドタバタしたアンサンブルで展開するのが、彼らの音楽性の特徴です。

 ベースレスの2ピースということで、当然ながら通常の3ピースや4ピースのバンドと比較すれば、音数は少なくなり、建造物のように凝ったアンサンブルも構成しにくくなります。しかし、2ピースというミニマルな編成を逆手にとり、ロックのプリミティヴな攻撃性やグルーヴ感を、生々しくパワフルに響かせるのが、彼らの魅力であり、特異なところ。

 デビュー・アルバムでもある前作『The White Stripes』で聞かれた、ガレージらしい攻撃的なサウンドと、ロックのかっこいい部分を凝縮したようなアンサンブルはそのままに、さらに音楽性の幅を広げたのが本作です。

 1曲目「You’re Pretty Good Looking (For a Girl)」では、ドスンドスンとぶっきらぼうにリズムを刻んでいくドラムに、ざらついたサウンドのギターと、高らかに自由に歌い上げるボーカルが重なり、楽器の数は限られているものの、立体感のあるアンサンブルが展開。

 2曲目「Hello Operator」は、ドラムとギターが覆いかぶさるようにシンプルなリズムを刻み、手数は少ないのに、ダイナミズムが大きく、グルーヴ感に溢れたホワイト・ストライプスらしい楽曲。

 4曲目「Apple Blossom」は、アコースティック・ギターとピアノが用いられた、ガレージロックの要素は薄い、ブルージーな1曲。再生時間1:04あたりからの間奏での、パーカッシヴにリズムを刻むピアノと、伸びやかにソロを弾くギターの掛け合いも秀逸。

 5曲目「I’m Bound To Pack It Up」は、アコースティック・ギターがフィーチャーされた、穏やかな1曲。間奏から入ってくるヴァイオリンもアクセントになっており、クラシック要素ではなく、カントリー要素を楽曲にプラス。

 6曲目「Death Letter」は、ミシシッピー・デルタ・ブルースの伝説的シンガー、サン・ハウス(Son House)のカバー。ガレージロックらしい、ざらついた歪みのギターで、ブルースの名曲をパワフルな音像で、カバーしています。ギターのフレーズはブルージーな空気を失わず、ドラムとギターの絡み合いはロック的なグルーヴを持っていて、すばらしいアレンジ。ジャック・ホワイトの、ギタリストとしての技量の高さを思い知らされます。

 11曲目「Jumble, Jumble」は、下品に歪んだギターとドラムが前のめりにリズムを刻んでいく、ガレージ色の濃い1曲。テクニカルに難しいことをしているわけではないのに、バンドがひとつの塊になって迫ってくるような、臨場感と迫力に溢れた演奏。

 13曲目の「Your Southern Can Is Mine」は、ピードモント・ブルース・シンガーであり、ラグタイム・ギタリストでもあった、ブラインド・ウィリー・マクテル(Blind Willie McTell)のカバー。ピードモント・ブルース(Piedmont blues)とは、1920年代にピードモント台地周辺で起こった、フィンガースタイル・ギターを用いたブルースの一形態。アコースティック・ギターとドラムにより、音数を絞ったプリミティヴな演奏でカバーしています。

 前作同様、ブルースやカントリーなどのルーツ・ミュージックを、ガレージロックの飾り気のない音像で包んだのが、本作の基本的なサウンド。しかし、ルーツがより色濃く出たアレンジを採用するなど、前作にも増して、多彩な音楽を取り込んだアルバムとなっています。

 基本的にはギターとドラムだけ、というミニマルな編成だからこその、無駄を省いたパワフルなアンサンブルも、唯一無比。音楽が脳に直接叩き込まれるような、ダイレクトな魅力を持ったバンドです。

 





Devendra Banhart “Niño Rojo” / デヴェンドラ・バンハート『ニーノ・ロッホ』


Devendra Banhart “Niño Rojo”

デヴェンドラ・バンハート 『ニーノ・ロッホ』
発売: 2004年9月13日
レーベル: Young God (ヤング・ゴッド)
プロデュース: Michael Gira (マイケル・ジラ)

 テキサス州ヒューストン生まれ、ベネズエラのカラカス育ちのシンガーソングライター、デヴェンドラ・バンハートの4thアルバム。

 ヤング・ゴッドからは3枚目のアルバムで、プロデューサーを務めるのは前作に引き続き、同レーベルの設立者でもあるマイケル・ジラ。アルバム・タイトルの「Niño Rojo」とは、直訳すると「Niño」は「男の子」、「Rojo」は「赤」。

 2004年4月にリリースされた前作『Rejoicing In The Hands』から、わずか5ヶ月の期間を空けてリリースされた本作。パーカッションのソア・ハリス(Thor Harris)、チェロのジュリア・ケント(Julia Kent)、ピアノのジョー・マクギンティー(Joe McGinty)など、多くのバンド・メンバーも前作と共通。

 音楽性も前作に近く、アコースティック・ギターと歌を主軸にしたフォーキーなサウンドの中に、ところどころ緩やかにサイケデリックなアレンジが挟まれます。穏やかなのに、どこかが壊れたような、牧歌的なのにアヴァンギャルドな空気も漂わせる音楽性は、アシッド・フォークやフリーク・フォークと呼ぶにふさわしいものです。

 1曲目の「Wake Up, Little Sparrow」は、ミズーリ州セントルイス出身のフォーク・シンガー、エラ・ジェンキンス(Ella Jenkins)のカバー。アコースティック・ギターのゆったりとした伴奏に乗せて、語尾を震わしながら、情緒たっぷりに歌い上げていきます。昔のフォーク・シンガーやブルース・シンガーを彷彿とさせる、歌の力を感じる演奏と歌唱。

 2曲目「Ay Mama」は、ギターが軽やかにリズムを刻み、ボーカルはロングトーン主体で余裕を持ってメロディーを紡いでいく、牧歌的な1曲。ですが、再生時間1:20過ぎあたりから、奥の方でトランペットが鳴り響き、さらに後半ではフルートらしき音も聞こえ、厚みとアクセントを加えます。

 4曲目「Little Yellow Spider」は、ギターとボーカルが絡み合い、一体となって前に転がっていく曲。ギター主体のアンサンブルですが、アレンジとサウンド共に立体的で、ゆるやかなグルーヴ感があります。2007年には、携帯電話のコマーシャルに使用されました。

 6曲目「At The Hop」は、サンフランシスコ出身のフォーク・バンド、ヴェティヴァー(Vetiver)のアンディー・キャビック(Andy Cabic)が書いた曲で、ボーカルとしてレコーディングにも参加。軽やかに踊るようなギターに乗せて、デヴェンドラ・バンハートとアンディーのボーカルが絡み合い、ゆるやかに躍動するアンサンブルが展開。

 7曲目「My Ships」は、もつれるようなギターの伴奏に、ヴィブラートを多用した呪術的なボーカルが合わさり、サイケデリックで、ほのかにアングラ臭も漂う1曲。

 8曲目「Noah」は、スローテンポに乗せて、カントリー色の濃いアンサンブルが展開する、田園風景が眼に浮かぶような、牧歌的な1曲。厚みのあるコーラスワークも、牧歌的な雰囲気をさらに盛り上げています。

 11曲目「Horseheadedfleshwizard」では、小刻みなリズムのギターが走り、ボーカルは長めの音符を使ったフレーズを重ねます。フレーズとハーモニーの両面で、サイケデリックな空気を持った曲。

 フォークやカントリーを基本としながら、意外性のあるフレーズやハーモニーを用い、さりげなく実験性やサイケデリアを漂わせるアルバムです。ただのフォークやカントリーとは呼びがたい違和感が、本作にはあります。

 そのため、一部の人にとっては、受け入れがたい気持ち悪い音楽となるでしょう、しかし一部の人にとっては、最初は居心地が悪く感じていた音色やフレーズが、やがて音楽的なフックとなり、耳から離れなくなるでしょう。