「2005年」タグアーカイブ

Lightning Bolt “Hypermagic Mountain” / ライトニング・ボルト『ハイパーマジック・マウンテン』


Lightning Bolt “Hypermagic Mountain”

ライトニング・ボルト 『ハイパーマジック・マウンテン』
発売: 2005年10月18日
レーベル: Load (ロード)
プロデュース: Dave Auchenbach (デイヴ・オーチェンバック)

 ロードアイランド州プロヴィデンス出身の2ピース・バンド、ライトニング・ボルトの4thアルバム。ドラムのブライアン・チッペンデール(Brian Chippendale)と、ベースのブライアン・ギブソン(Brian Gibson)の2人によって、凄まじいテンションで、テクニカルかつカオティックな演奏が繰り広げられるのが、このバンドの魅力。

 1作目から、ロックの音質面でのソリッドな攻撃性や、ヘヴィメタル的なテクニックが存分に詰め込まれた…いや、むしろ楽曲の構造よりも、サウンドとプレイ自体が前景化した音楽を展開してきたライトニング・ボルト。4作目となる本作でも、攻撃性の凝縮されたサウンドを踏襲しています。

 しかし、前作『Wonderful Rainbow』からは、楽曲らしい構造も洗練化され、初期の作品よりもポップで聴きやすく進化。4作目となる本作でも、以前の実験性と攻撃性はそのままに、より一般的なロックとしても聴きやすいアルバムとなっています。

 前述のとおり、ベースとドラムからなる2ピースですが、ベースの音は度々エフェクト処理によって、ギターに近い音域まで持ち上げられているようです。

 1曲目「2 Morro Morro Land」は、カタカタと高速で前のめりにリズムを刻みドラムと、図太いサウンドのベース、高音域を使ったノイジーなフレーズが疾走していく1曲。アルバム1曲目から、テンションの高い演奏が繰り広げられます。

 2曲目「Captain Caveman」は、イントロから、ジャンクに歪んだベースが塊となって、押し寄せます。奥の方からはボーカルのメロディーも聞こえ、このバンドにしては曲らしい構造を持った1曲と言えます。

 3曲目「Birdy」は、イントロから繰り返されるリフに、ドラムとボーカルも重なり、一体となって駆け抜けていく1曲。

 6曲目「Magic Mountain」は、イントロから暴発しそうなテンションを抑えたような、緊張感のあるアンサンブルが展開。しばらく控えめのサウンドでの演奏が続きますが、再生時間1:45あたりからシフトが切り替わり、やや加速。その後も爆発しそうで爆発しない、スリリングな空気を保ったまま、アンサンブルが続きます。

 7曲目「Dead Cowboy」は、ドラムの高速ビートと、ギターらしき音色(のベース?)の速弾き、重たく硬質なベースが、パワフルなサウンドとアンサンブルを繰り広げる1曲。テンションの高いシャウト系のボーカルも、楽曲の疾走感を増加させています。

 10曲目「BizarroBike」は、前のめりのビートと、奇妙なボーカルが、絡み合うアヴァンギャルドな1曲。途中から入ってくる速弾きのフレーズが、さらに疾走感を与えています。

 実験性の強い音楽を志向するライトニング・ボルトですが、本作ではボーカルが入る部分が多く、アンサンブルもリフを主体にしていて、ハードロックやヘヴィメタルの範疇でも聴きやすいアルバムに仕上がっています。

 リスナーをある程度選ぶ音楽であることは確かで、誰にでもオススメできるわけではありませんが、本作『Hypermagic Mountain』と、前作『Wonderful Rainbow』は、このバンドの作品の中では、聴きやすいと思います。

 





Goon Moon “I Got A Brand New Egg Layin’ Machine” / グーン・ムーン『アイ・ガット・ア・ブランド・ニュー・エッグ・レイン・マシーン』


Goon Moon “I Got A Brand New Egg Layin’ Machine”

グーン・ムーン 『アイ・ガット・ア・ブランド・ニュー・エッグ・レイン・マシーン』
発売: 2005年6月7日
レーベル: Suicide Squeeze (スーサイド・スクイーズ)

 トゥイギー・ラミレズ(Twiggy Ramirez)名義で、マリリン・マンソンに参加していたジョージア・ホワイト(Jeordie White)と、マスターズ・オブ・リアリティ(Masters Of Reality)のクリス・ゴス(Chris Goss)の2人から成るバンド、グーン・ムーンのデビュー作となるミニ・アルバム。

 本作では、上記2名に加えて、サクラメント出身のマスロック・バンド、ヘラのドラマーを務めるザック・ヒル(Zach Hill)もメンバーとしてクレジット。それ以外にも、複数のゲストを招いてレコーディングされています。

 当サイトのジャンルでは「エクスペリメンタル」に振り分けましたが、ポストロックともマスロックとも、エクスペリメンタル・ロックとも呼べる音楽が展開されるアルバムです。ジャンルで音楽を聴くわけではないし、そこまで気にする必要も無いんですけどね。

 前述したように、マリリン・マンソン、ア・パーフェクト・サークル(A Perfect Circle)、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)に参加していたジョージア・ホワイト、デザート・ロックの雄マスターズ・オブ・リアリティを率いるクリス・ゴス、さらに変態バカテク・ドラマーのザック・ヒルの3人が揃うこのバンド。その期待どおりに、実験的でバラエティ豊かなアンサンブルが繰り広げられる作品になっています。

 1曲目の「The Wired Wood Shed」から、立体的なドラムと、地を這うようなベース、倍音たっぷりの豊かな歪みでリフを弾くギターが、音合わせのように、さりげなく演奏を展開します。1分ほどのイントロダクション的な1曲。

 2曲目「Mud Puppies」は、ハードロック的なギター・リフを主軸に、バンドが一体となって躍動するアンサンブルに、浮遊感のあるコーラスワークが溶け合います。

 3曲目「Inner Child Abuse」は、アンビエントな音像のイントロから、エフェクトを深く施したエレクトロニックな耳ざわりの各楽器と、高速ドラムが溶け合う、音響系ポストロックに近い1曲。

 4曲目「The Smoking Man Returns」は、3曲目に続いて、高速ドラムと電子音が溶け合い、アヴァンギャルドな空気が強く漂う1曲。

 6曲目「Rock Weird (Weird Rock)」は、いわゆるロボット・ボイスと呼ばれるような、エフェクト処理されたボーカルが印象的。音数を絞り、タイトでジャンクなアンサンブルが展開されます。

 7曲目「Mashed」は、アコースティック・ギターを中心に据えた、オーガニックなサウンドのイントロからスタート。その後、エフェクト処理されたアングラ色の濃いボーカルが入り、ジャンクさとポップさの同居した、躍動感あふれるアンサンブルが展開されます。

 ドラムは曲によってフリーなリズムとタイトなリズムを巧みに叩き分け、ギターはロックのハードな部分を凝縮したようなリフを弾き、ベースは全体を支えるようにメロディアスなベースラインを紡いでいく、各人の個性がぶつかり合い、有機的に絡み合う1作です。

 音楽的には実験的な要素も多分に含まれ、決してポップな作風ではありませんが、ロックの音質上の魅力や、アンサンブルのかっこよさが、むき出しのまま提示されるような、ダイレクトな感覚に溢れています。

 





Hella “Church Gone Wild / Chirpin Hard” / ヘラ『チャーチ・ゴーン・ワイルド / チャーピン・ハード』


Hella “Church Gone Wild / Chirpin Hard”

ヘラ 『チャーチ・ゴーン・ワイルド / チャーピン・ハード』
発売: 2005年3月22日
レーベル: Suicide Squeeze (スーサイド・スクイーズ)

 ギターのスペンサー・セイム(Spencer Seim)と、ドラムのザック・ヒル(Zach Hill)による、カリフォルニア州サクラメント出身のマスロック・バンド、ヘラの3rdアルバム。これまでの2枚は、キル・ロック・スターズのサブレーベル、5 Rue Christineからのリリースでしたが、本作はスーサイド・スクイーズからリリースされています。

 ディスク1が『Church Gone Wild』、ディスク2が『Chirpin Hard』と、それぞれのディスクにタイトルが付けられた2枚組のアルバムです。しかし、ヘラ名義でのリリースではありますが、『Church Gone Wild』はザック・ヒル、『Chirpin Hard』はスペンサー・セイムのソロ・アルバムとなっており、純粋なヘラの作品とは、趣向が若干異なります。

 とはいえ、2人の変態的なテクニックはもちろん健在。これまでのヘラらしい部分も、多分に含んでいます。ヘラの特徴というと、非常にテクニカルな演奏を繰り広げながら、サウンドやアレンジに、思わず笑ってしまうぐらい、コミカルな要素や、やりすぎな部分があるところ。いわゆるポップな歌モノではないにも関わらず、とっつきやすさを持っているところが魅力です。

 本作も、メンバー2人それぞれの演奏とアイデアが、ノイジーかつカラフルに展開されます。前述したとおり、2枚組でそれぞれのディスクが、それぞれのソロ作品となっているので、個々の音楽的志向を知る上でも、興味深い作品と言えます。

 ディスク1『Church Gone Wild』は、ザック・ヒルのソロ作。ドラム以外にもギターやボーカルが入っていますが、全てザックによる演奏とのこと。

 手数の多い高速ドラムを中心に、ノイジーなギターや絶叫系ボーカルが飛び交う作品になっています。ドラムが本職のザックだけに、ドラムがアンサンブルの主軸になるのは納得ですが、ギターや電子音などがドラムに絡まり、思いのほかカラフルな世界観を作り上げています。

 例えば3曲目の「Half Hour Handshake: Movement 3」では、叩きつけるようなパワフルなドラムに、ピコピコした電子音が絡まり、親しみやすさを演出。再生時間2:00あたりからは、ボーカルが入り、ドラムがメタリックなサウンドへ。そのまわりで多様な音が飛び交う、ノイジーでカラフルな1曲です。

 ディスク1全体を通して、ノイズ要素を多分に含んでいるのに、どこかコミカルで、ハードルの高さを感じさせないところは、これまでのヘラの音楽性と共通しています。

 ディスク2『Chirpin Hard』は、スペンサー・セイムのソロ作。こちらはヘラというよりも、ファミコンの楽曲をカバーする、スペンサーの別バンド、アドバンテージ(The Advantage)に近い音楽が展開されます。すなわち、正確なテクニックとファニーな音色を用いて、ポップで親しみやすいメロディーを奏でる作品。

 1曲目「Gold Mine, Gold Yours」から、まさにファミコンを彷彿とさせるピコピコ系の音色によってメロディーが奏でられ、そこにリズムマシーンのように、画一的なビートが重なります。

 2曲目「Song From Uncle」では、サウンドがよりソリッドに。しかし、高音域のギターと思われる音色は、押しつぶされたように奥行きが無くチープ。そんなチープな音色で、テクニカルなソロが披露されていきます。

 7曲目「Dad For Song」は、各楽器が歯車のように噛み合い、アンサンブルを構成。かっちりと制御された演奏が続きますが、再生時間1:28あたりから、ジャンクでラフな展開を見せます。

 12曲目「Chirpin Hard」では、前半はファミコンを彷彿とさせる電子音が使われ、なにかのゲームのボス戦のテーマ曲のような、スリリングなアンサンブルが展開されます。

 ディスク1とディスク2共に、マスロックらしい魅力を持ったアルバムであると思います。ディスク1は、高速ドラムを中心に、ロックのダイナミズムと疾走感を凝縮したようなかっこよさが随所にあり、ディスク2には、ロックのアンサンブルの機能性と、そのかっこよさが詰まっています。

 メンバー2人のソロですが、それぞれのディスクに、ヘラと共通する部分、異なる部分があり、ヘラの音楽性がどのような個性の衝突によって出来上がっているのか、その過程を垣間見ることもできます。

 現在のところ、AppleとSpotifyでは配信されておりませんが、Amazonでは配信されています。ちょっと珍しいパターン。





Okkervil River “Black Sheep Boy” / オッカーヴィル・リヴァー『ブラック・シープ・ボーイ』


Okkervil River “Black Sheep Boy”

オッカーヴィル・リヴァー (オッカヴィル・リヴァー) 『ブラック・シープ・ボーイ』
発売: 2005年4月5日
レーベル: Jagjaguwar (ジャグジャグウォー)

 テキサス州オースティン出身のバンド、オッカーヴィル・リヴァーの3rdアルバム。アルバムのタイトル『Black Sheep Boy』は、60年代に活躍し、1980年に亡くなったフォーク・シンガー、ティム・ハーディン(Tim Hardin)の楽曲「Black Sheep Boy」にインスパイアされたとのこと。

 1stと2ndでは、フォークやカントリーを下敷きに、オルタナティヴな音色とアレンジを散りばめたインディーロックを展開していたオッカーヴィル・リヴァー。3作目となる本作は、前2作の音楽性を基本としながら、やや実験性と疾走感が増し、サウンドもソリッドになっています。特に、比率は多くはありませんが、効果的に挿入される歪んだエレキ・ギターの響きが、アルバム全体にハードな印象をもたらしています。

 ボーカリゼーションも、ここまでの3作の中で比較すると、最も感情豊かで、アグレッシヴな面も際立っています。フロントマンのウィル・シェフ(Will Sheff)が書く歌詞も、このバンドの大きな魅力のひとつですが、サウンド面だけでなく歌詞の面でも、今まで最もダーティーで激しい要素のあるアルバムと言えます。

 1曲目「Black Sheep Boy」は、アコースティック・ギターとボーカルのみの穏やかでミニマルな雰囲気で始まり、徐々に楽器が増え、緩やかなアンサンブルが展開される1曲。1分20秒ほどのイントロダクション的な役割の曲で、再生時間1分過ぎからは、電子的な持続音が鳴るエレクトロニカのような音像へ。カントリー色の濃い前半から、エレクトロニカ色の濃い後半へと自然に繋がり、このアルバムとバンドの音楽性を端的に示した1曲と言えます。

 2曲目「For Real」は、感情を抑えたボーカルとアコースティック・ギターを中心にした静かなイントロから始まりますが、歪んがエレキ・ギターが鋭く切り込んでくる、オルタナティヴな雰囲気の1曲。ハードなギターの音色と比例して、ボーカルも静かなささやき系の歌唱と、エモーショナルな歌唱を使い分けています。再生時間1:37あたりからの間奏の空間系エフェクターを用いたサウンドや、再生時間3:25あたりからのギターソロも、オリタナティヴな空気をさらに演出。

 3曲目「In A Radio Song」は、フィールド・レコーディングらしき音と、穏やかなボーカルとアコースティック・ギターのアレンジが溶け合う、カントリーと音響系ポストロックが融合した1曲。

 4曲目「Black」は、ビートがはっきりしていて、タイトで疾走感のある1曲。ヴァースからコーラスへの盛り上がりも鮮やかで、メリハリの効いたアンサンブルが展開されます。

 6曲目「A King And A Queen」は、アコースティック・ギターと中心にした牧歌的な1曲ながら、ストリングスとトランペットが壮大さ、キーボードの音色が多彩さを加え、カントリーの単なる焼き直しではない、モダンな雰囲気を併せ持った曲。

 10曲目「So Come Back, I Am Waiting」は、8分を超える大曲。アルバムのタイトルにもなっている「black sheep boy」が歌詞に登場し、スロー・テンポに乗せて、コントラストの鮮やかな、壮大なアンサンブルが展開される1曲です。

 11曲目「A Glow」は、静かなボーカル、空間系エフェクターの深くかかったギター、ストリングスがゆったりしたテンポの中で溶け合う、穏やかな音響系の1曲。

 過去2作と比較して、最もオルタナティヴ性が強く出たアルバムであると言えます。これまでどおり、フォークやカントリーの香りも漂うのですが、それ以上に激しく歪んだエレキ・ギターに代表される、オルタナティヴな要素が色濃く出ています。

 また、柔らかな電子音やフィールド・レコーディングを用いて、エレクトロニカのような音響的アプローチを見せる部分もあり、音楽性のさらなる拡大を感じるアルバムでもあります。

 





The Evens “The Evens”/ イーヴンス『イーヴンス』


The Evens “The Evens”

イーヴンス 『イーヴンス』
発売: 2005年3月7日
レーベル: Dischord (ディスコード)
プロデュース: Don Zientara (ドン・ジエンターラ)

 イアン・マッケイ(Ian MacKaye)と、元ウォーマーズ(The Warmers)のエイミー・ファリーナ(Amy Farina)による2ピース・バンド、イーヴンスの1stアルバム。担当楽器はイアンがギター、エイミーがドラム。イアン・マッケイが設立した、ワシントンD.C.の名門レーベル、ディスコードからのリリース。

 ギターとドラムのみのミニマル編成のバンドですが、揺らぎとグルーヴのある立体的なアンサンブルが構成されるアルバムです。楽器の数が絞られることで、2人の穏やかな歌唱が前景化し、ひとつひとつの音と言葉が非常にソリッドに感じられます。このように音楽が濃密に感じられるのが、2ピースの魅力的なところ。

 ディスコードの創始者の1人であり、ワシントンD.C.のハードコア・シーンの中心的人物のイアン・マッケイですが、本作ではギターもボーカルも、サウンド的には穏やか。

 1曲目「Shelter Two」は、ギターのみのシンプルなイントロから、ドラムと共に徐々に躍動感を増していく1曲。速度や音圧に頼らず、シンプルな音作りで、手数と演奏の強弱だけで、盛り上がりを演出しています。立体的なアンサンブルと、2人のコーラスワークも息がぴったりで、魅力的。

 2曲目「Around The Corner」は、左右から交互にはずむように響くギターと、ゆったりとタメを作ったドラムが、奥行きのある立体的なサウンドを作り上げる1曲。音数が少ないのに、いや少ないからこそ、空間の広がりが感じられるサウンド・プロダクションです。

 3曲目「All These Governors」は、シニカルの歌詞が印象的。「うまくいくはずの時にも、うまくいかない。それがこいつら(these governors)のやり方さ。」と、ワシントンD.C.の各種長官を皮肉るような歌詞です。演奏も、シンプルで飾りかのない音作りながら、疾走感があり、そのむき出しのサウンドが、より一層シニカルな態度を浮き彫りにしています。

 4曲目「Crude Bomb」は、手数が多く、回転するような立体的なドラムに、やや歪んだ流れるようなギターが絡む1曲。歌が入ってきてからの、ドラムのキックも加速感を演出しており、躍動感がある曲です。

 8曲目「If It’s Water」は、繰り返されるギターのフレーズと、手数を絞ったシンプルなドラムが重なる1曲。ぴったりと合わさるわけではなく、適度にラフな部分があり、グルーヴと躍動感を生み出しています。

 11曲目「Minding Ones Business」は、ギターもドラムも低音域を用いた、重心の低いサウンド・プロダクション。2人のボーカルも、メロディーを歌うというよりも、呪術的な雰囲気で言葉を発しており、サイケデリックかつアンダーグラウンドな空気が漂います。

 激しく歪んだギターや、音圧の高いドラムには頼らず、シンプルな音作りながら、立体的なアンサンブルが展開され、非常に情報量の多さを感じるアルバムです。個人的には、こういう作品は大好き!

 ローファイというわけではありませんが、ギターもドラムも飾り気のないむき出しの音色で、アンサンブルの面でも音数を絞った、ミニマルでストイックな音楽が展開されます。

 また、歌詞もシニカルなものが多く、フガジやマイナー・スレットとは音楽的には異質ですが、こちらもパンク精神を多分に持ったバンドだと思います。