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Yo La Tengo “Painful” / ヨ・ラ・テンゴ『ペインフル』


Yo La Tengo “Painful”

ヨ・ラ・テンゴ 『ペインフル』
発売: 1993年10月5日
レーベル: Matador (マタドール)
プロデュース: Fred Brockman (フレッド・ブロックマン), Roger Moutenot (ロジャー・ムジュノー)

 ニュージャージー州ホーボーケンで結成されたバンド、ヨ・ラ・テンゴの6枚目のスタジオ・アルバム。1stアルバムから5thアルバムまでの間に、コヨーテ・レコード(Coyote Records)、バーナン(Bar/None)、エイリアス(Alias)と、レーベルを渡り歩いてきたヨ・ラ・テンゴですが、6枚目となる本作から、USインディーを代表する名門レーベル、マタドールに移籍しています。

 また、本作は2014年にデモ・バージョンやライブ・トラックを加えた『Extra Painful』として、再発されています。配信でも、青いジャケットの通常の『Painful』と、赤いジャケットの『Extra Painful』の両方が存在しますので、ご注意ください。

 アルバムによって、音楽性を変えつつも、芯にあるヨ・ラ・テンゴらしさはブレないところが、このバンドの良いところです。本作『Painful』は、前述のとおりマタドール移籍後の最初のアルバムであり、音楽的にもこれまでのヨ・ラ・テンゴらしい実験性を残しつつ、電子音を用いたアンビエントな雰囲気がプラスされていて、音楽性の広がりを感じる1枚。

 1曲目「Big Day Coming」は、アンビエントな電子音が漂い、これまでのヨ・ラ・テンゴからは異質な耳ざわりの1曲。アルバム冒頭から、早速バンドの新しいモードを提示します。しかし、アンビエントな音像の中に、響き渡るギターのフィードバックなど、バンドの躍動が徐々に立ち現れてきます。ゆったりとしたテンポで、音響を重視したようなサウンドからは、幻想的な雰囲気が漂います。

 2曲目「From A Motel 6」は、基本的には穏やかに進行しますが、随所に挟まれるノイジーで不安定なギターのフレーズが、アクセントになった1曲。例えば、再生時間1:53あたりからの間奏部分のフレーズは、アヴァンギャルドな空気を振りまき、楽曲に奥行きを与えています。

 5曲目「Nowhere Near」は、ささやくようなボーカルと、弾力性のあるサウンドのギター、ヴェールのような電子音が溶け合う、穏やかな1曲。前半は、リズム隊があまり前に出てきませんが、徐々にドラムの手数が増え、立体的にリズムを刻み始めます。音響的な前半から、ゆるやかなグルーヴ感が生まれる後半という展開。

 6曲目「Sudden Organ」は、トレモロがかったキーボートに、圧縮されたような歪みのギター、立体的なドラムが折り重なる1曲。アレンジにもサウンドにも実験性が感じられますが、ドライヴするギター、親やすいメロディーと歌唱が、ポップな空気をプラスし、バランスをとっています。ヨ・ラ・テンゴは、このあたりの実験性と大衆性のバランスが、本当に秀逸。

 7曲目「 A Worrying Thing」は、アコースティック・ギターのようにも聞こえるクリーントーンのギターがフィーチャーされ、カントリー色の濃い1曲。ですが、奥の方で鳴っている柔らかな電子音が、カントリーだけにはとどまらないオルタナティヴな空気を足しています。

 10曲目は「Big Day Coming」。1曲目と同じタイトルで、歌詞も共通していますが、アレンジと全体のサウンド・プロダクションは大幅に異なり、まるで別の曲のように聞こえます。僕も、タイトルを確認するまで気がつきませんでした。電子音がフィーチャーされ、音響的でアンビエントな1曲目に対して、10曲目に収録されたバージョンは、トレモロをかけたジャンクな響きのギターがフィーチャーされ、リズムもくっきり。バンドの有機的なアンサンブルが前面に出たアレンジです。

 1曲目と10曲目に異なるアレンジで収録された「Big Day Coming」が象徴的ですが、決して頭でっかちにはならず、自分たちの音楽を誠実に突き詰めていることがわかるアルバムです。「Big Day Coming」のアレンジを例にとると、音響的なアプローチの1曲目と、バンドのアンサンブルを重視した10曲目では、サウンドもアレンジも全く異なるのですが、どちらからも実験性とポップさのバランスにおいて、ヨ・ラ・テンゴらしさが溢れています。

 様々なジャンルの音楽を愛聴し、アイデアを吸収し、それを借り物ではなく消化して、自分たちの音楽に取り込む、インディーロックの魅力を多分に持ったバンドであり、本作もバランス感覚に優れた素晴らしいアルバムであると思います。





Scud Mountain Boys “Massachusetts” / スカッド・マウンテン・ボーイズ『マサチューセッツ』


Scud Mountain Boys “Massachusetts”

スカッド・マウンテン・ボーイズ 『マサチューセッツ』
発売: 1996年4月1日
レーベル: Sub Pop (サブ・ポップ)
プロデュース: Mike Deming (マイク・デミング), Thom Monahan (トム・モナハン)

 マサチューセッツ州ノーサンプトンで結成されたオルタナティヴ・カントリー・バンド、スカッド・マウンテン・ボーイズの3rdアルバム。1st『Dance The Night Away』と2nd『Pine Box』は、共にチャンク・レコード(Chunk Records)というインディー・レーベルからのリリースでしたが、3枚目となる本作はシアトルの名門レーベル、サブ・ポップからリリース。

 ちなみにチャンク・レコードは、スカッド・マウンテン・ボーイズの地元ノーサンプトンで活動するバンド、ザ・マラリアンズ(The Malarians)のフロントマン、JMドビーズ(JM Dobies)が運営していたレーベルで、1986年から2000年まで活動していたようです。

 1991年結成のスカッド・マウンテン・ボーイズは、世代的にはオルタナ・カントリーの第一世代と言っていいバンドです。しかし、多くのバンドも拒絶するように、ジャンル名やムーヴメントで音楽性にレッテルを貼るのは、そのバンドの魅力を捉え損ねることに繋がりかねません。

 では、実際に本作では、どのような音楽が鳴らされているのか。アコースティック・ギター、スティール・ギター、さらにマンドリンも使用され、オーガニックな楽器の響きを用いて構成されるアンサンブルは、まさにカントリー的。同時に、サウンド・プロダクションの面でも、アレンジの面でも、オルタナティヴな要素は薄いと言えます。

 ボーカルのジョー・パーニスの穏やかな声とメロディー・センスも相まって、カントリーだけにとどまらない様々なジャンルの香りを感じる、より広い意味でアメリカーナな作品となっています。

 一般的なオルタナ・カントリーというと、カントリー色の濃い音楽に、ノイジーなギターや実験的なアレンジを織り交ぜる、というのが主流ですが、本作はそのような方法論は取らず、多様なルーツ・ミュージックを、借り物では無い自分のセンスでまとめ上げています。その点では現代的であり、オルタナティヴであるとも言えるでしょう。

 前述したように、生楽器のオーガニックなサウンドを活かしたアルバムであり、カントリーに近いサウンド・プロダクションを持っていのも事実ですが、随所で使用されるエレキ・ギターがカントリー色を薄め、現代的な空気を取り込んでいます。

 1曲目「In A Ditch」から、きわめて穏やかなサウンドとメロディーを持った音楽が展開。複数のギターが心地よく絡み合うアンサンブルが繰り広げられます。

 4曲目「Grudge ****」は、ゆったりとしたテンポの穏やかな曲ですが、随所に差し込まれるエレキ・ギターやピアノの音色が、オルタナティヴな空気を吹き込みます。例えば、再生時間2:19あたりからの伸びやかなソロは、楽曲を俄然カラフルにしていると言っていいでしょう。ちなみにタイトルの「****」には、Fワードが入ります。

 7曲目「Lift Me Up」は、ほどよく歪んだエレキ・ギターのサウンドから、フォークやカントリーというよりも、古き良きアメリカン・ロックの空気が溢れる1曲。

 スカッド・マウンテン・ボーイズは、本作がリリースされた翌年の1997年に解散。しかし、2012年に再結成し、2013年には本作から17年ぶりとなる4thアルバム『Do You Love The Sun』をリリースしています。ちなみのこちらのアルバムは、2000年にフロントマンのジョー・パーニス(Joe Pernice)が立ち上げたレーベル、アッシュモント・レコード(Ashmont Records)からのリリース。

 ジョー・パーニスはスカッド・マウンテン・ボーイズ解散後に、パーニス・ブラザーズ(Pernice Brothers)を結成しますが、このバンドはスカッド・マウンテン・ボーイズよりもインディーロック色の強い音楽を志向しています。ジョー・パーニスは、当初からもう少しカントリー色を薄めた音楽をやりたかったのでは、と考えると、本作の絶妙なバランスの理由が、より強く感じられるのではないでしょうか。





Nation Of Ulysses “Plays Pretty For Baby” / ネイション・オブ・ユリシーズ『プレイズ・プリティ・フォー・ベイビー』


Nation Of Ulysses “Plays Pretty For Baby”

ネイション・オブ・ユリシーズ 『プレイズ・プリティ・フォー・ベイビー』
発売: 1992年10月6日
レーベル: Dischord (ディスコード)
プロデュース: Ian MacKaye (イアン・マッケイ)

 ネイション・オブ・ユリシーズの2ndアルバムであり、解散前にリリースされた最後のスタジオ・アルバム。本作『Plays Pretty For Baby』が発売された1992年にバンドは解散しますが、当時3rdアルバムを製作中であり、解散から8年後の2000年に、3rdアルバム用に完成していた6曲にライブ・トラックを加え、『The Embassy Tapes』として発売されます。

 1stアルバム『13-Point Program To Destroy America』で、トランペットの音色をアクセントに、ハードコアとフリージャズが融合したアヴァンギャルドな音楽を展開していたネイション・オブ・ユリシーズ。2ndアルバムとなる本作では、アート性と実験性がさらに色濃くなった、オリジナリティ溢れる音楽を展開しています。

 本作はLP盤では13曲収録ですが、CD盤では7インチEPとして発売されていた『The Birth Of The Ulysses Aesthetic』収録の3曲を追加し、計16曲が収録されています。

 1曲目の「N-Sub Ulysses」は、ドイツの哲学者・ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』(ツァラトゥストラはこう語った)の朗読から始まります。朗読に続き、多層的に音が重なる、バンドの複雑なアンサンブルがスタート。音程を細かく移動する、ギターのジグザグのフレーズが印象的。間奏に挟まれるトランペットの音色もアクセント。

 3曲目「The Hickey Underworld」は、ギターとトランペットが不穏に響くイントロから、ノイジーでアヴァンギャルドな演奏が展開される1曲。感情を吐き出すようなブチギレ気味のボーカルも、緊張感を演出します。

 4曲目「Perpetual Motion Machine」は、ノイジーで金属的な響きのギターが暴れまわり、前のめりに疾走する1曲。

 9曲目「Shakedown」は、ヴァースとコーラスの対比が鮮烈で、「Shakedown」という歌詞も耳に残る1曲。アルバム全体を通して言えることですが、ボーカルの存在感が大きいです。

 12曲目「S.S. Exploder」は、上から叩きつけるような軽快なドラムのイントロから、彼らの楽曲のなかでは比較的ストレートに疾走する1曲。各楽器が一体感を持って、アンサンブルが構成されます。

 サウンド・プロダクションの面では、ノイジーでガ60年代のレージ・ロックを感じさせる本作ですが、音楽性の面ではジャズやソウルからの影響を感じさせます。6曲目「50,000 Watts Of Goodwill」と14曲目「The Sound Of Jazz To Come」は、ジョン・コルトレーンの『A Love Supreme』を参照しているとのこと。「The Sound Of Jazz To Come」というタイトルからは、オーネット・コールマンの『he Shape Of Jazz To Come』も連想されます。

 トランペットを使用しているからジャズの影響を感じる、といことではなく、各楽器のリズムや全体のアンサンブルにおいて、直線的な8ビートはほぼ聞かれず、複雑で立体的な演奏を展開します。

 アヴァンギャルドで地下的な雰囲気と、ハードコア的なハイテンションが見事に融合した1枚。頭に「ポスト」がつくジャンルは、音楽性を固定化するのが困難ですが、本作はポスト・ハードコアの名盤と呼ぶにふさわしい作品だと思います。





Nation Of Ulysses “13-Point Program To Destroy America” / ネイション・オブ・ユリシーズ 『13ポイント・プログラム・トゥ・デストロイ・アメリカ』


Nation Of Ulysses “13-Point Program To Destroy America”

ネイション・オブ・ユリシーズ 『13ポイント・プログラム・トゥ・デストロイ・アメリカ』
発売: 1991年7月1日
レーベル: Dischord (ディスコード)
プロデュース: Ian MacKaye (イアン・マッケイ)

 1988年にワシントンD.C.で結成されたポスト・ハードコア・バンド、ネイション・オブ・ユリシーズの1stアルバム。バンド名の表記には、定冠詞の「The」が付いていたり、いなかったりしますが、この1stアルバムのジェケットでは、付いていません。

 結成当初はユリシーズ(Ulysses)というバンド名でしたが、1989年にギタリストのティム・グリーン(Tim Green)が加入した際、ネイション・オブ・ユリシーズへ改名しています。

 本作『13-Point Program To Destroy America』された翌年の1992年に、わずか4年の活動期間で解散してしまうバンドですが、ディスコードらしいスピード感と個性に溢れ、多大なインパクトを与えたバンドです。本作は、ディスコードの創始者、イアン・マッケイがプロデュースを担当し、疾走感と独特のねじれのあるポストハードコア・サウンドが鳴らされます。

 現代的なハイファイ・サウンドと比較してしますと、やや音圧不足に感じる方もいらっしゃると思いますが、それを上回るテンションが閉じ込められたアルバムです。特にボーカルとトランペットを担当するイアン・スベノーニアス(Ian Svenonius)の歌唱は、エモーショナルで鬼気迫るものがあります。また、アレンジメントは直線的なだけでなく、ノー・ウェーブ(No Wave)を彷彿とさせる実験性も多分に含んでいます。

 1曲目の「Spectra Sonic Sound」から、細かいリズムで、疾走感あふれる演奏が展開されます。絶叫するボーカルが、緊迫感をさらに演出。

 3曲目「Today I Met The Girl I’m Going To Marry」は、疾走感のある曲ですが、ビートが直線的ではなく、ところどころ足がもつれるように、複雑に駆け抜けていきます。自由で、投げやりな雰囲気のボーカルとのバランスも秀逸。

 4曲目「Ulythium」は、イントロからトランペットがフリーなフレーズを吹き、楽曲にアヴァンギャルドな空気を漂わせます。トランペットと、2本の歪んだギターが絡み合い、フリージャズとハードコアが融合したように疾走する1曲。

 12曲目「Target: USA」は、バンド全体が前のめりに疾走していく1曲。ボーカルも含め、波のようにバンドが躍動しながら迫ってきます。

 13曲目「Love Is A Bull Market」のタイトルは、フランク・シナトラのアルバム『Love is a Kick』にインスパイアされているとのこと。楽曲は、各楽器が回転するような、うねりのあるフレーズが絡み合う、一体感のある曲。

 あえてジャンル分けするならば、ハードコアあるいはポスト・ハードコアに入れられる音楽性を持ったバンドですが、前述したとおり本作にはアヴァンギャルドな空気も多分に漂い、フリージャズからの影響も聞こえます。

 トランペットの音もアクセントとなり、スピード感やギターの激しさのみを重視したバンドとは一線を画した音楽を鳴らすバンドです。ディスコード所属のバンドは、ハードコアを下敷きにしながら、オリジナリティ溢れる豊かな音楽性を持ったバンドが多く、非常にディグしがいがあります。





The New Year “The End Is Near” / ザ・ニュー・イヤー『ジ・エンド・イズ・ニア』


The New Year “The End Is Near”

ザ・ニュー・イヤー 『ジ・エンド・イズ・ニア』
発売: 2004年5月18日
レーベル: Touch And Go (タッチ・アンド・ゴー)
プロデュース: Steve Albini (スティーヴ・アルビニ)

 90年代を代表するスロウコア・バンド、ベッドヘッド(Bedhead)のメンバーだったマット(Matt Kadane)とバッバ(Bubba Kadane)のカデイン兄弟が結成したバンド、ザ・ニュー・イヤーの2ndアルバム。ベッドヘッド時代から引き続き、スロウコアと呼んでよい音楽を奏でるバンドです。

 2001年に発売された1stアルバム『Newness Ends』は、ゆったりとしたテンポに乗せて、シンプルな音作りの各楽器が、ゆるやかに絡み合う、スロウコアらしい1作でした。2作目となる今作『The End Is Near』は、前作の音楽性をさらに深化させたアルバムと言えます。

 前作と比較しながら本作を説明するなら、ゆったりとしたテンポはそのままに、音数と音作りをさらに吟味し、少ないパーツで最大限のグルーヴ感を生むよう、ストイックなまでに絞り込まれた作品です。また、前作に引き続きレコーディング・エンジニアを務めるスティーヴ・アルビニが作り出す、生々しい音像も、バンドの無駄のないアンサンブルを、ますます際立たせています。

 1曲目「The End’s Not Near」は、早速アルバムのベスト・トラックと言える1曲です。ピアノとギターが絡み合うイントロに、穏やかに囁くようなボーカルが重なり、徐々に音が増え、立体的なアンサンブルが構成されていきます。再生時間0:52あたりなど、随所に差し込まれるピッキング・ハーモニクスのような、ややノイジーな高音のギターも、アクセントになっています。

 3曲目「Chinese Handcuffs」は、各楽器とも粒の立ったフレーズで、タイトなアンサンブルを作り上げる1曲。再生時間1:08あたりからの、躍動感が生まれるアレンジなど、1曲の中でのコントラストも鮮やか。

 5曲目「Disease」は、このアルバムの中でもテンポが特に遅く、音数を絞ったミニマルなアンサンブルが展開。ゆったりとリズムをためるように、リズムが伸縮するように進行していきます。また、この曲にはアルバムのプロモーションの為に、ミュージック・ビデオが作成されています。

 6曲目「Age Of Conceit」は、イントロからドラムが立体的に響き、メリハリと躍動感のある1曲。テンポは抑えめですが、小気味いいドラムのリズムが、軽快なグルーヴ感を演出しています。再生時間2:40あたりから、バンド全体のシフトが上がる展開も鮮やか。

 9曲目「Stranger To Kindness」は、シンプルなサウンドのギターを、ミニマルなリズム隊に、物憂げなボーカルが溶け合う、スロウコアらしい1曲。隙間の多いアンサンブルから、徐々に隙間が埋まっていき、ゆるやかに躍動していきます。

 アルバムを通して、音数を絞り、間を大切にした作品です。「間を大切にした」と言うより、時には間にも意味が生まれるぐらいに、音数を絞ったアレンジも展開されます。

 テンポを落とすことで、楽器の絡み合いによって生まれる一体感や躍動感が前景化するところが、スロウコアと呼ばれるジャンルが目指すところのひとつですが、本作はそういう意味で、スロウコアの名盤と呼んでいいクオリティを備えています。